トランプの遊戯
真白慈々
プロローグ
昔からあったー否。突如として現れたといった方が幾分か正しいだろうか。記憶の片隅に昔からあった様だ。けれど、それも正しいかどうかわからない。なぜならば、誰も知らないからだ。大都会、東京。そこから少し外れた閑静な住宅街の中心に佇む、洋館。赤煉瓦で力強い壁を形成し、その回りには鼠色をしたコンクリートと鉄鋼石で門を形作っている。まるで、大正時代を彷彿とさせるような外観だ。
さて、本題に戻らせてほしいのだが。先程から何やらよくわからぬ洋館の説明をしている語り手の正体を明かすところから始めさせていただきたい。私がなぜこんな文を打っているのか、についてだ。私の名前はー。いいや、難しい。自分の名前を名乗るのが難しいという人は生まれてはじめて見ただろうが、本当に無理難題なのだ。なぜか。不必要だからだ。何が不必要かって?冗談を言うな。小学生の頃にあったことではないか。ドリルのノートの表紙には油性の黒いペンでフルネームを書いたと言うのに、宿題を提出するページには必ず名前を筆記しなくてはならない。のような謎の決まりが。そして私は無駄が嫌いだ。無駄なことだらけのこの世界、すべての人間が馬鹿に見える。それが私の主観だ。名前なんぞ、この物語を紡ぐこの世界の神のような存在がどれだけでも打つではないか。語るではないか。だからこそ、こんな無駄なことをしている暇など私には存在しない。それも一種の無駄だろう?
ふむ、ここまで話すときりがない。ではこうしよう。この物語を紡いだ理由だけ述べて終わろうではないか。私がこの物語を紡いだ理由ー。
大都会に佇む洋館には噂があったー。あの洋館には入るな。勇気があるのなら入れ。なんでも、入ってしまうと支配人を名乗る少女に一生トランプ遊びをさせられるーと。そして幼い頃から好奇心が人一倍多かった私がその洋館の門戸を開けてしまったからである。
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