第33話 対峙
シュリフス殿下と騎士と三人で走る! 黒い靄を浄化しながら、騎士は魔物と戦いながら進む。
途中で生徒会三人組とも合流した。
「ルシア、無事!?」
ロナルドが叫ぶ。
「うん! 大丈夫!」
三人と共に魔法で攻撃しながら、騎士団も到着し魔物をなんとか倒す。学園内の黒い靄はほぼ浄化出来た。
しかしまだ王都には黒い靄が広がる。
「セルディ殿下とアイリーン様は!?」
「おそらく王都だ!」
セルディ殿下はボルデン公爵と共に騎士団を指示しているらしい。アイリーンはおそらく一緒にいるのではないかということだった。
「クラウド公爵はどこ!? クラウド公爵の持つ魔石をなんとかしないと、きっといつまでもこの黒い靄はなくならない!」
「「「「!!」」」」
走りながら叫んだ言葉に皆が驚きの顔をする。
「そうか、元凶を絶たないといつまでも終わらないんだな。くそっ、クラウド公爵の行方か」
アイザックが思考を巡らせていた。
「おそらく自分の身が安全な場所にいるはず……」
「安全な場所……」
皆がハッとした顔になった。
「「「「「王宮!!」」」」」
全員が顔を見合わせ、目を見開いた。
「急げ!!」
皆が王宮へと走る!
学園から王都を抜け王宮へ。王都に広がる黒い靄も浄化していく。途中セルディ殿下の姿が見えた。
「セルディ殿下! アイリーン様は!?」
「ルシア嬢! アイリーン? アイリーンは王宮で国王の傍を護ってもらっています!」
「王宮!?」
全員が焦りの顔となった。
「先に行きます!!」
生徒会三人組は魔物を攻撃しながらセルディ殿下に状況を説明する。話を聞いたセルディ殿下の表情が一気に蒼白に。
「ルシア嬢!! 後で追いかけます!! アイリーンを!! お願いします!!」
「はい!!」
王宮まで走る。城門では騎士団が魔物の侵入を防いでいる。おそらく王宮内に魔物はいないのだろう。それだけは救いだ。しかしクラウド公爵がいるかもしれない。嫌な予感しかしない。アイリーン!! どこにいるの!?
「ルシアさん!! こっちです!!」
シュリフス殿下が叫ぶ。
「この先に王の間が!!」
シュリフス殿下と共に走る。扉を勢い良く開けると中には……
「おや、もうここまで来られたのですね。王都の魔物はどうなりましたか?」
上品な身形の初老の男が王座の前に立っていた。その手には赤黒い球体が握られていた。禍々しい気配を漂わせる魔石……それが例の魔石であることはすぐに分かった。
この人物がクラウド公爵。
「ルシアさん!!」
クラウド公爵の背後、王座には国王と、傍らに寄り添うアイリーンがいた。
良かった、アイリーンは無事そうだ……。
「アイリーン嬢は婚約破棄されたのですよね? なぜ今さら国王のお傍におられるのですか? もう貴方は関係ないのでは?」
「私は婚約破棄などしておりません。今もなお、セルディ殿下を支えるために私は存在しております」
毅然とした態度で答えるアイリーン。しかしその言葉を聞いたクラウド公爵は不敵に笑った。
「クックックッ……、なるほど、そういうことですか。私はすっかり騙されたようですねぇ」
ニヤリと笑ったクラウド公爵に背筋が凍る。不気味な笑顔だ。なんなの、この人。魔石の禍々しい気配が、この人自身から溢れ出ているような錯覚に陥る。
「クラウド公爵、そなた何をしたいのだ。こんなことをしてなんになる。王国を滅ぼしたいのか」
国王がクラウド公爵に問う。セルディ殿下の父、シュリフス殿下の兄である国王は、お二人の優し気な雰囲気とよく似た、優しいおじ様といった人だった。しかしさすが国王なだけあって威厳を感じる。
こんなときですら冷静で威厳のある態度に感心する。
「私はなにもしておりませんよ? ただ魔石を手に入れただけです。それがどうなるかは知ったことではありませんがね。魔石のせいでなにかが起こったのだとしても、どうにかするのは陛下やボルデン公爵の仕事でしょう」
なんて白々しい!! 腹立つわー!! クラウド公爵自身から魔石の気配が漂うということは、明らかになにかをしているはず。ぶん殴って吐かせてやりたいけど、今はそれどころじゃないわね。とりあえずあの魔石を浄化してしまわないと。
クラウド公爵の意識が国王に向いている間に浄化魔法の準備を!
祈りを捧げるように手を組み魔力を集中させる。
「おっと、ルシア嬢でしたっけ? 貴女のその力は厄介ですねぇ」
急に振り向いたクラウド公爵は、ニヤッと笑うと魔石を目の前に差し出し力を込めた。すると魔石から禍々しい黒い靄がぶわっと広がり一気に王の間を埋め尽くす。
「「「「!!」」」」
「陛下!!」
「ルシアさん!!」
アイリーンは国王を庇い、シュリフス殿下は私を庇い抱き締めた……。
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