第5話 4つのルート!

「フフ、ラドルフとアイザックのそんな姿が見られるとはな。ルシア嬢は面白い方だ」


 面白いって……褒められてないような……。


「貴女は魔力が高いことを隠しておられるのですか?」


「…………」


 こ、これは正直に言うべきなのかしら……いずれはバレることなんだけど、ここでバレても良いものなのかしら……私が出逢いを回避しているせいで、ストーリーも変わって来ているのかしら……でもすぐに補正されちゃうのよね……出来ればこの四人とは関わりたくないのに!


「すみません、あまり目立ちたくないのです……」


「…………しかし、貴女ほどの魔力をお持ちならば国にとって有益な人材です。国の人間としてはそれを見過ごすことは……」


「でも……」


 それはそうだと思うし、おそらくストーリー上、いつかはバレて国の魔法師団で聖女扱いとなるはずなのよね……でも、とりあえずアイリーンが婚約破棄を免れるまでは大人しくしていたい……。


 ちょっとうるうるしてみせた。三文芝居だなぁ、とか自分で思うけど……ここはきっとヒロイン補正で絆されるはず! きっと! いや、どうかな……無理かしら……チラッとセルディ殿下を見る。


「あぁ、申し訳ない。それほど目立ちたくないというならば、しばらくこの件は我々の胸のなかだけに留めましょう」


 絆された!! ちょろい!! えぇぇ、そんな簡単で良いのかい! いや、まあ良かったんだけどさ。ちょっと心配になっちゃうレベルよ、そのちょろさ!


「まあ、仕方ないな」

「うんうん」

「いつかはバレると思うがな」


 他三人もとりあえずは納得してくれたようだ。うん、ちょろい。お姉さん心配になっちゃう。おばさんじゃないわよ、お・ね・え・さ・ん!


「とりあえず我々の胸には留めますが、教師の目は誤魔化すことは出来ないでしょう。いずれは正直に話さねばならないときがきます」


「はい……」


「私の叔父には協力してもらえるように頼んでおきましょう」


「叔父!?」


「え? えぇ」


 あ、しまった、「叔父」に反応し過ぎて、つい叫んでしまった。


「叔父というのはシュリフス殿下ですか?」


「えぇ、私の父の弟、シュリフスをご存知ですか。この学園で保健医をしています」


「えぇ!! もちろん!!」


 思わずセルディ殿下に詰め寄ってしまい、セルディ殿下は後ろに引いた。


「ご存知なら話は早い。もし必要ならばご紹介しますよ」


「ぜひー!!」


 目を輝かせセルディ殿下に詰め寄る。


「おい、僕たちのときと態度が違い過ぎるだろう」


「えっ」


 アイザックが不機嫌そうな顔付きでデコピンをしてきた。


「痛った!! ひ、酷い」


「アイザック!! レディになんてことを!!」


 セルディ殿下が慌てて私のおでこを撫でた。ぎゃぁぁあ、またしてもイケメンのドアップ!!


「大丈夫ですか?」


 おでこを撫でながら、顔を覗き込むセルディ殿下。さらにはロナルドが頭を撫でる。


「アイザック、さすがに令嬢にそれはダメだろ」


「んん?」


 知らんぷりをするアイザックにイラッ。なんか思ってたアイザックじゃないんだけど! アイザックってもっと陰湿な嫌がらせをしては喜んでたような……こんな子供みたいな嫌がらせじゃなかったと思うんだけど。


 ムムッとしているとラドルフはフッと笑って顔を背けた。ん? ラドルフが今笑った? えぇ? ラドルフもなんか違う! そんな簡単に笑うようなキャラじゃなかったと思うんだけど。


 なんだかみんな微妙に性格が違うような気もするけど……えっと、


 ロナルドはお姉さんがたくさんいて末っ子だし後継ぎだし、で、めちゃくちゃ過保護に育てられて優しいんだけどどこか頼りなくて……、ヒロインと出逢って男らしく生きるためにどうしたら良いのかと葛藤するんだよね。

 それをヒロインと過ごすうちに無理をしなくても今のままの自分で良いんだ、と思えるようになってヒロインと幸せになる、ってラストだったかな。


 ラドルフは母親がすでに他界していて、父親が異常に厳しくて常に自分を律し生きてきたため、自分にも他人にもとても厳しい人になっちゃったのよね。

 それをヒロインと出逢い、たまには息抜きをしても良いんだ、というヒロインの言葉に救われ肩の荷が下りるのよね。そして今まで冷たい表情でしかなったラドルフはヒロインにだけ笑顔を見せるようになりハッピーエンド。


 アイザックは愛妾の子で早くに亡くなってしまったため、父親に引き取られたが本妻に虐げられてきたため、他人を信用することが出来ず、常に愛情に飢えていた。

 ヒロインと出逢い、女性というものを嫌悪していたアイザックは執拗にヒロインに嫌がらせをし、監禁までしてしまう。しかしヒロインが大きな愛で包み込み、自分がなぜ女性を嫌悪していたのか、本当は愛情が欲しかったということを受け入れ心を救われる。そして愛に目覚めたアイザックはヒロインを溺愛するように。


 ついでにセルディ殿下ルートはもうなんというか本当にただひたすら溺愛なのよね。最初から好感度も高いんだけど、新入生ということと魔法関係のおかげで関わることが多く、なにかあるたびに助けてくれて、徐々に触れ合うようになっていく。

 それを見たアイリーンがめちゃくちゃ怒るんだけど、そのせいで余計に二人の親密度が上がっていくのよねぇ。


 うぅん、好きでやり込んでいた身からすると、こうやって客観的に解説をするとめちゃくちゃよね。ヒロインだけが異常に愛される意味が分からん! そらアイリーンも怒るわ!


 結局どのルートに進んでも、アイリーンは断罪・婚約破棄は免れないのよね……。全てのルートでアイリーンは断罪され、婚約破棄され……。


 そして傷付いたアイリーンは……闇落ちするのよ……。

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