HARDふるDAYS!!
きめら出力機
第1話 フツーに転生させてよ
私の名前は多田野ヒトコ。なんの取り柄も無い女の子。好奇心は…まぁあるからいろいろやるけど、投げ出しやすいし、大体他の人より2、3歩劣る。要領も悪いから覚えるのも大変…覚えても飽きちゃうけど。そんな私の唯一、他と違う部分と言えそうな名前すら、
種族全体の紹介みたいになってしまっている。…あぁー私って何なら勝てるんだろう。あ、それと私の親は絶対おかしい。
普通、人にヒトコって安直の極みみたいな名前つけるかな?こんな名前をつけるのはきっと信長か私の親ぐらいだろう。きっとそう言う奴は猫にも「ねこ」とか名付けるんだろうなぁ。とか親はゲームキャラにも「あ」とか「あああ」とかつけてたんだろうなんて考えながら、通学路を通っていた。私の高校の名前は「S県立桜ヶ丘高等学校」と言う。名前だけは小綺麗だけど、実際は受験勉強を頑張らなかったヤツがいく学校って感じなところで友達付き合いとか部活動とかだけ必死に打ち込んで、勉強は試験前にパパッとやって、ハイ惨敗、って感じのやつが多い印象だ。ん?私?私は違うよ。…だって友達いないし、行事でも活躍しないし。部活動もしてない。一緒のところは勉強に関してだけだよ。
…そう。つまり私はなんとかなるやって甘い考えだけで生きて、実際何にもできない、社会にとっての大きなお荷物ってワケ。そんな事をずっと考えながら校門まで行くと、いつも通り教師が挨拶をしている。この人は確か体育の先生だった気がする。朝から元気だなぁと思いつつ挨拶をして教室に向かった。…きっと聞こえなかったと思うけど。教室に着くと皆がワイワイガヤガヤと騒いでいた。
……まあ、当たり前のことだけどね。自分の席に座り机の中に教科書を入れていると、
クラスのトップカースト連中は騒いでいる声が聞こえた。
(……なんだろう?)
聞こえる内容から判断するとそれはラブレターについてだった。カースト上位層らしい女子はこう言い始めた。そしてそれがが始まりだった。
「なんか、変なラブレターが入っていたの!しかも差出し人が…」と言いながらこちらに指を指した。それに大袈裟に反応した男子や女子が白い目でこっちを見てくる。…な、なにを言ってるの?あの人たちは。わ、私はそんなことまったくしてないよ。というか私が女子に!?
しかし、ヒトコには、人並みの勇気が無かった。思ったことはなにも言えず、沈黙は肯定と捉えられ、私の立場はとうとう低値を割った。
それから恐れた通りのことが起こった。休み時間になると私の周りを囲むようにクラスメイト達がやってきたのだ。彼らは私がどんな気持ちなのか知らないくせに一方的な言葉を浴びせてきた。
それを私は右へ左へかわすこともなく、彼らの浴びせる言葉をサンドバックの様に受けていた。
「あ、そろそろ授業が始まるね」1人の女子が思い出したようにして言った。
そう言うと彼らはつまらなさそうな顔をしながらも自分たちの席に戻っていった。その様子を見届けると私は机に突っ伏した。
(もう嫌だよ……。こんな役回りはもう何回目だろう……。)
思えば小、中、そして今…目立たないように生きてたのに(望んでではないよ!)いつもこんな感じだ。
(……今日も、誰かのサンドバッグさんだ、私…はは。)
そう思いながらも時間は過ぎていった。
***
放課後、部活があるものは急いで部室に向かい、無いもの達は帰路についたり、そのまま遊びに行ったりした。私はと言うともちろん帰る準備をしていた。
その時ふと思った。(なんであの時、あの子は助けてくれたんだろう。)
あの時の時間は授業開始の2分前ぐらいだと思う。確かに開始前ではあるけど、あと2分も時間があれば、普通もっとイジメると思う。
少なくとも私だったらそうすると思う。…ってことはもしかしてあの子はすごく優しい子なのかな?いや、待て。私なんかを助けてもなんの意味も無いと思う。それならどうして? と、頭の中で考えていると、不意に声をかけられた。
「ねぇ、ちょっといい?」
振り返ってみるとそこには先程、僕を助けた女の子がいた。
「あ、あの、はい。」うん!我ながら上手く答えれた!けれど彼女は気まずそうにしながらこう続けた。
「えっとさっきはごめんなさい!」
彼女は深々とお辞儀をした。
「あ、いえ、全然大丈夫です。」
正直びっくりしている。まさか謝られるとは思ってなかったし、それも私なんかに。
「ありがとう。」と言いながら人並み以下の出来の笑顔を向けた。それを見て、彼女はさらに気まずそうにしながらこう続けた。
「あ、そうだ。私の名前を言うのを忘れてた。私は『神原 夏帆』って言うの。よろしく。」
そう言われて少しドキッとした。
「わ、私は多田野ヒトコって言います。よ、よろしく」へぇ〜そんな名前だったんだ。知らなかったなぁ。…同じクラスなのに。
すると、神原さんは臆面もなく、「へぇ~そんな名前なんだ。知らなかったなぁ!あ、同じクラスか!」と言ってきた。
さすがカースト上位。レベルが違う。感心してたら、神原さんが急にこんなことを言ってきた。
「じゃあさ、今度一緒に遊ばない?連絡先は交換しようよ」
私は一瞬固まってしまった。
え?どう言うこと?遊ぶってどこに?連絡先ってなに?混乱してるうちに、いつの間にか連絡先が登録されていた。
それで怖くなって、私は泣きそうになりながら、「こ、これってば、罰ゲーム?」と言った。大分上づってたと思う。すると神原さんは笑いながら「違う違う。…ほんとだよ?でも、もし罰ゲームだったとしても、それはそれでちゃんと最後までやるから」と返された。
……やっぱり凄いなぁ。ん?最後ってなに?棺桶までってこと?
その後、短い話をしてから、いや。聞いてから家に帰った。家に帰ってからもずっと考えていた。今日起こったラブレター事件についてだ。結局、あれはなんだったのか。ただの嫌がらせなのか?それとも……いや、やめよう。考えたところで意味は無いし。そして私はベッドの上で寝転がっていた。その時ふと思った。(……あれ、このスマホは誰のだろう?)
よく考えると私のではない気がする。まあ、どうでも…良くない!!速攻で立ち上がって、リビングに走ってお母さんに質問しようと走った。
だけど、そこでも恐ろしい事態に陥った。「……誰?」目の前に知らない女性が?というかここどこ?パニックになった私は外を今度は泣きながら走った。まさか家を間違えるなんて…ん?本当に間違えたのかな?道順は合ってたはず。通った道も既視感しかなかった。
その疑問の答えを探るように家の外観を見ていたら、後ろから死ぬほど神々しい光が満ちてきて、自分の周りが真っ白い空間になった。しばらく戸惑っていたら、女神っぽい人が舞い降りてきて「あちゃー。やっちまったかぁ。なんとかなったとおもったんだけんどねぇ~反省。反省。」と多分だけどそんな軽く済まされないだろ!と言いたくなるような事を言い出した。私はそのことを態度に出さないように気を付けながら「あの、あ、貴方誰ですか?」と聞いた。すると彼女は私の何倍も大きい声で「声小さい!なんつったの!」と言ってきた。そんなことある?だから私は私なりに、最大級の大きな声で「あ、貴方、誰ですか!」と叫ぶようにして言ったそういうと彼女は「あ、そう言ったのね。えーと私の名前はエリスでーす!えっと、仕事は女神してまぁーす!…つーかまだ声ちっさぁ!」そんなことない。エリスは続けてその軽い口調で死ぬほど絶望的なことを言い始めた。「まぁ。いいか…えっとね実は、手違いでこの世のものじゃなくなってしまったの。…死んだってことね。」え?どうして。今なんて言ったんだろう?死んだ?いや確かに死んでるみたいな人生だったよ?でも、殺すのは違うでしょう!?「い、いつからですか?」また限界まで声を張り上げて聞いた。それに対してエリスは「順応早いねェえっと家に帰る直前ぐらいかな。そこから君は死んでてねぇ…」その言葉を遮って「それが私の家が変になったことと関係があるんですか?」とやはり大声で言うと、「つまり、簡単に言うと貴女の席はこの世界にはもう無いのよ!」と返ってきた。
「え。そ、それってどういう?」
「えっとね。まず命には席があります。その数は大体60億!!」大体って…。エリスはさらに続けて話し出した。
「そんでその席に着くと、世界に生まれてくるって訳なのよ。んでんで、毎日その席の取り合いを繰り広げてるって訳ね。」
「そいで、死んだら席から離れて、魂は列の後ろに回されます。そんだら、先頭の魂が席に座る訳。どぉ〜理解できた?」
急にエリスに確認されて驚いた私は「は、はい。な、なんとか。」とだけ答えた。するとエリスは言い辛そうにしながら
「つ、つまりね。死んだ者は列に戻るべきなのよね。け、けど、死んでるのにまだ現世にいる魂があったのよね…そんで、間違えて。」
驚いた。この女神はもしかして、私は死んでたも同然だったから、殺したというんだろうか。そうとしか考えられないが、もしそうなら流石の私も命の尊厳と人間讃歌を武器に戦わないといけなくなる。…そんな様子を見てエリスは「えっと。…まぁこんな例、他にないからさぁ…」
と頭を掻きながら言ったので、些細な反抗ついでに「……私以外はみんな生きてるって本気で言えるんですかねぇ。」というとエリスは
「当たり前じゃん。あんただけだよ。何にも取り柄ないやつ。…悪口とか、犯罪とかそれも立派な取り柄だよ。
ほら…普通、ストップかかるでしょ?……まぁ良い取り柄じゃないけどねェ」え?私はそれ以下?真っ白になってる私を見てエリスは続けた。
「実際思い出してみなよ?昔、なんて褒められてた?」私はなんでそんなことを…と不貞腐ながら仕方なく、
「……大人からは手の掛からない良い子とか、あと同学年からは優しい?みたいな。」と照れながらそんな感じのことを言った。
するとエリスは哀れむような目をして「要するに都合の良い人型のなんかだったんだねぇ。」「え。」人生最大級の否定と罵倒を同時に受けた私はどうして良いか分からず、みっともなく涙を流しながらエリスに抱きついた。すると、彼女はちょっと嫌そうな顔してから諭すようにしながら、「……まあ、とりあえずさぁ。一回落ち着こうよ。それに、これからについて説明するからさぁ。」と言った。
それから、私はエリスと今後について話し合った。
「まぁ、さすがに見てられないからさぁ…転生する?」
「え!?蘇らせてくれるんですか!?」泣きながらそう言うと、「まぁ、別の世界でね。だから神原とか言う子とはもう会えないから。」と言ってきた。私は驚いたのと、見透かされてたことに恥ずかしくなって「い、今それ、か、関係ないですよ!?」とかよくわからないことを早口で言いまくった。それをジト目で見ていたエリスは「ほーん。じゃあ第一段階は終わりかな。」とか「だから、つまり貴女の代わりにその席に座ったものがぁ~」とか言ってた気がするけど、私は神原さんと会えなくなくなる事実をずっと考えていた。…ほとんど今日会ったばかりみたいなものなのに。どうして彼女が気になるんだろう。会う前のほうがずっと長かったと言うのに。…寂しいとか考えてくれるかな。…もし、前にいる女神に殺されなかったら彼女はどこに私を連れてってくれたんだろう。そんな感じのことをずっと考えてたらエリスが「……って感じだけど、現状の能力だけで大丈夫そ?」と聞いた。私はびっくりして、「な、なんのことですか?」…私がこれを言う頃には大声だと思っていた普通の声が出せるようになっていた。そんな私に、エリスは笑いながら「いやぁ~ファンタジーな世界に行くならチート能力とか欲しがるかなぁ〜って思ってさぁ。」
「え!?ち、チート能力!?欲しいです!欲しいです!!」
「お、おぉ;すごい食いつき。でも、まぁ。いっか。1人ぐらいそんな奴がいても…」
「で、どんな能力くれるんですか!?」
「まぁ落ち着いて。本人の適正から選ぶのが早いかしら。…ヒトコちゃん?趣味とか得意なことは?」
「えっと。私の趣味はゲームとアニメ鑑賞と読書と音楽鑑賞と……」
「待って!!オタクなのは分かったから!!」
「えっと、じゃあ……手芸と料理と絵と……あ、小説書くのも好きです!!」←どれも並み以下
「あぁ……もういいわよ……で、どれにする?(…小説って夢小説とかかしら?)」
「え?いまの中からですか?それは、あんまりチート能力じゃないようなぁ?」
「ほーん。じゃランダムにする?」…ラ、ランダム。死ぬほど怖い響きだけどなんかそそられる…私の得意なことだけじゃなくて、普通の人が選んだチート能力も入ってるんだし!きっとハズレは少ないだろうそう考えて、「やります。」と宣言したその後、エリスはルーレットマシンみたいなものを持ってきて戸惑う私を他所にルーレットを回した。そしてルーレットの針が止まり、私のチート能力が決まった。
「へぇ。あなたのチート能力はどうやら…」
「『鬱』ね。」
「えっ。」
「い、いえ。なんでもありませんよぉ?では早速、貴女を転移させますね。」
「あっはい。」
「あ、あのぉ……ちなみにどんな効果か聞いてもいいですかぁ?」
「あ、はい。えっとですね……その……簡単に言うと……その……えっと……じ、自分の好きなタイミングで……そ、その……つ、疲れたり、落ち込んだり、悲しくて死にたくなったりと……まぁそんな感じで……あはは……」
「あ、そ、それ、今持ってる奴ですよ?しかもチートじゃないし?。」言いながら泣きそうになった。
「い、いやチート能力よぉ?だって、どんな健常者でも、いつでも落ち込めるんだもん…あはは。」泣いた。
「ど、どうして異世界に行ってまで、鬱にならなきゃいけないんですか!死体蹴りやめて下さいヨォぉぉ」と叫ぶとエリスは
「だから言ったじゃん!?得意なことから選べって!自分で選んだじゃない!?」と逆ギレしてきた。
だから、「そこまでの道を綺麗に舗装したのは誰ですか!?」とキレ返すと、「私だよ!それがどうした!?」とキレた。
こうやって2人で訳わかんないこと言い合っていて、そっから抱き合って、泣き合った。…この人も今日会ったばっかりになんだけどなぁ。
落ち着いてきたエリスは「よ、よしこうしよう。能力の名前決めよう!?「鬱」じゃかっこ悪いでしょう!?」と提案した。投げやりな気持ちになっていた私は「良いですね!?どうせならカッコいい名前にしましょう!?」と快諾した。するとエリスは「…どうやってつける?」と聞いてきた。その後色々と方法を出し合ったがしたがどれも納得できず、最終的に“あの”ルーレットに委ねることにした。
ルーレットが回転し、その針が一つの名前の位置に止まった。それをエリスは高らかに読み上げた。
「あなたの手に入れた好きなタイミングで鬱になれるチート能力の名前は『サボタージュ』!!」
「え、ダサッ。ん?というかヒドッ!鬱はサボりなんですか!?」
「うるさいわねぇ。ルーレットで決まったんだから文句なし!…あ、あと、能力はそのうち、成長するから期待しといたら?」…どんな期待?
こうして、私はエリスに厄介な奴を追い払うようにされながら異界に転生することになった。
しばらくして私は目を覚ました。まだ光に慣れない目を無理やり開けて周りを見てみた。目の前には木々があり、
後ろを振り返ると……そこには大きな街が広がっていた。
私はとりあえず歩くことにした。…そうこれは私、タダノヒトコがまた歩き出すための物語だ。
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