人間ピラミッド

@yuri_yuri_3150

第1話

ハンス=アンデルセン、それが彼の名前。

彼のテリトリーは、自然と、人類の英知の結晶、科学の共存した、非常に豊か且つ近代的で便利な、付け加え地域性溢れるものであった。

彼の両親もまた誰もが認める人格者であり、優秀な科学者であり、そしてでもあった。

周囲には、彼を貶めようとするものはなく、みな彼を一人の人間として尊重し、また社会というものでさえ、彼を個人という名で騙り護り、そうしてはみな彼を優しき檻に閉じ込めてしまったのである。

故に彼の、身に置かれた環境は一般的に大変恵まれていたもので、それが却って仇となったのだ。とでもいえば適切だろうか。それはもう、一集団の悪名を代表してしまうほどに、彼にとってそれは苦痛に身悶えするものだった。

優しさとは、時として牙を剥き、車輪の如く人を軋轢の中でおもむろに、ジワジワと押し潰していく処刑器具なのである。

しかしこれは他とは違って、本当にたちが悪いことに、人の良心に付け込んでは、なんの悪意もなく、そして彼の意に関係なく無邪気な子供のようにジワジワと向かってくるのである。

彼には優しさなどはいらなかった。

彼にそれは重すぎたのだ。最初から、見放されていた方が余程楽な人生だったのではなかろうか──

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

人間ピラミッド @yuri_yuri_3150

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ