第1話 伝説の中学生配信者の成れの果て!

【例の伝説の中学生について】



001 名無しのダンジョン


なんであの中学生ダンチュバー消えちゃったんだろうな。





002 名無しのダンジョン


それはやっぱU19なだけで稼げないのが嫌だったんじゃね?





003 名無しのダンジョン


でも、確か、売ればウン億になるレアドロップアイテム寄付したんだよ、あの子! お金にはこだわってないんじゃない?





004 名無しのダンジョン


じゃあ、やっぱり燃え尽きちゃった系w





005 名無しのダンジョン


中学生で世界レベルの人助けしちゃったんだぜ! そりゃ燃え尽きもするって!





006 名無しのダンジョン


天才には天才の苦悩があるんだな!





007 名無しのダンジョン


ほんとあの子の配信おもしろかったもんな!





008 名無しのダンジョン


今あの子何歳?





009 名無しのダンジョン


あれが中三だったとしたら、ちょうど18、9くらいか!





0010 名無しのダンジョン


そろそろ復活あんじゃね?





0011 名無しのダンジョン


まじまじ?





0012 名無しのダンジョン


じゃないダンジョン潜ってるあの子見たいよね!





0013 名無しのダンジョン


見たい! 見たい!






0014 名無しのダンジョン


でももしかしたら大学落ちて寂しい浪人生活送ってるかもよwww





         ⚫





 S川大学 ダンジョン配信部。

 

 俺、成果なるはて 鷹也たかやが入るはずだった国内の若手ダンジョン配信者のトップランカーたちが集まるエリート集団である。



「成果君、落ちちゃったの? ・・・・・・ダッサ。・・・・・・じゃあ、もう会うこともないだろうね! バイバイ!」




 高一からずっと親友だと思っていた羽月はづき あきらにそう言われた時、俺の人生は一度終わったんだと思う。




 俺は合格確実のA判定で、明は合格が絶望的なD判定だったのに・・・・・・ふたを開けてみれば明だけが2学部も合格し、俺は4学部全て落ちてしまった。


 

 なんでこうなっちまったんだろうか?



 F山大学のキャンパスを歩きながら俺は自問自答していた。




 もう死んじゃいたいよ。


 受かる気満々だったからな。


 なんせA判定だもの。


 それなのに・・・・・・。


 ダッサ。


 ああ、マジで死んじゃいたい。


 

 こんな思いするくらいなら!


 ・・・・・・もう友達なんて一生作らないぞ!


 大学生活はずっとぼっちで過ごしてやる!



 そんな後ろ向きなことばかりを思いながら、ずっと下を向いて歩いていたからだろう。



 ドンッ!



 と、思いっきり人とぶつかってしまった。





 やわらかっ!



 それが俺の頭の中に浮かんだ最初の感想だった。


 

 それからやっと顔を上げて確認すると、ぶつかった相手はド派手なハイトーンのメッシュヘアが似合いまくりのゴリゴリのギャルだった。



「すいません! ちゃんと前を向いてなくて! 怪我はなかったですか?」



 そう言ったのは俺ではなくそのギャルの方である。



「・・・・・・ああ、大丈夫」


 俺がそう答えると、そのギャルはいきなりこう叫んだのだ。


「ええっ! もしかして、とり満腹まんぷくさんですか?」


 鳥満腹とは何を隠そう俺のダンジョン配信者名なのであった。


「・・・・・・そうだけど」


「えーっ! マジですか? 鳥満腹さんがなんてF山大にいるんですか? 動画でS川大に行くって言ってませんでしたっけ? あたし、鳥満腹さんのチャンネルのガチファンなんです! 自慢じゃないですけど同接皆勤なんですよー!」


「あ、ありがとう・・・・・・」


 ああ、死にたい。


 そういや俺、自分のチャンネルで大学はS川大受けますって宣言してたっけ?


 カッコわりーな。


 この子もガチファンとか言ってるけど内心カッコわりーって思ってんだろうな。

  

 ってか、この子、めちゃくちゃかわいくないか?


 下手なアイドルより全然かわいい!


 それに胸めちゃくちゃ大きくて、水色のノースリーブドレス(ギャルなのにRPGのヒロインみたいな服装だな)がはち切れそうだ!


 さっきのやわらかかったのってもしかしてか?



 

 ダンジョンが世界で始めて発見されたのがほんの五年前。


 その数ヵ月後にはダンジョン探索の一部始終を動画配信するダンジョン配信者なるものが現れ、若者たちのヒーローとなった。


 そしてそのさらに一年後には俺は鳥満腹と名乗り中学生ダンジョン配信者となったのだった。


 ダンジョン探索の魅力はなんと言ってもそこに出現する魔物とその魔物が落とすドロップアイテム、そして宝箱の中の金銀財宝である。


 有名ダンジョン配信者は動画配信の広告収入で稼ぎ、さらにドロップアイテムや宝箱の金銀財宝を金にかえて巨万の富を得ている。


 特にドロップアイテムと宝箱関連の収入がすごくて有名ダンジョン配信者の年収は軽く億を超えている。


 しかし、それも満19歳になってからの話だ。


 と言うのも、それまでは大人たちが狩り尽くした後にそこそこ安全に半ばアトラクション化されたダンジョンと呼ばれるところにしか入ることを許されないのだ。


 もちろんそこでも魔物は出現するし、倒せばちゃんとドロップアイテムに変化してくれるし、宝箱だってちゃんとある。


 でも、ダンジョンを出る時にそこで得たものは、滅多に出ない紫色の光が特徴のレアドロップアイテム(レアドロップアイテムはダンジョン国際法でいかなる場合でも入手した者に所有権が与えられると定められているのだ)以外は全て回収されてしまうのである。


 そんなお遊びのようなダンジョンを探索する動画など人気になるわけがない。


 しかし、俺はその制約の中で頑張ったのだ。


 

 チャンネル登録者数 12万8千人 

 平均同時接続者数 約1500人

 活動期間 約1年



 19歳以下のダンジョン配信者の中では一応最上位だったが、まあ、それでも得られる収入は大人のトップランカーたちに比べれば屁みたいなものだ。


 結局19歳以下のダンジョン配信者が得られるのは微々たる富と名声と、後は戦闘経験のみ!


 たった一度だけ巨万の富を生むレアドロップアイテムを入手したのは、結局色々考えて寄付しちまったことを含めて俺の中のはかない伝説だ。






「確か鳥満腹さんって誕生日公表されてませんよね?」


 目の前の激カワ巨乳ギャルが俺にそう訊いてくる。


「ああ、そうだけど」


 俺はまた何かイケメンみたいに素っ気なく答えてしまう。


 内心ドキドキしているくせに女子が相手だとついカッコつけたり、スカしたり、厳しめのツッコミを入れたりと言動がバグってしまうのが俺の悪い癖なのだ。


「誕生日いつなんですか? あたしはちなみに今日、4月12日です!」


「えっ? 今日って4月12日だっけ?」


「そうですよ!」


「・・・・・・実は、俺も4月12日が誕生日なんだよ!」


「えーっ! そうなんですかー! じゃあ、あたしたち同じ年の同じ日に生まれたんですね!」


「・・・・・・みたいだな」


 ああ、なんで、みたいだねって言えばいいのにカッコつけちまうんだろうな、俺は。


 俺がそんなことを思っていると、相手は凝んな驚くべきことを言ってきたのだ。


「じゃあ、あたしたち二人とも今日からダンション探索できるじゃないですかー! 鳥満腹さん! あたしとダンジョン探索デートしましょうよ! 先日パパの部下が見つけたまだ誰も入ってないがあるんですよー! もしよければ、パパの行きつけの店でパパのつけで最新の装備を買い揃えて、そのまっさらなダンジョンであたしの初めてもらってください! 鳥満腹さん!」



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