2/1ガーディアン

89林檎

第1話 色彩

 長い黒髪を束ねた女性が問題のあった孤児院にやってきた。

 部下と共に地下の鉄の扉の前で足を止める。パスワードを打ち込むと音を立てて扉が開いた。

 

窓もない広い部屋の角に小さな少年が座っている。よく見ると少年の指先が震えていた。なにも食べていないのか体は痩せ細っていて、綺麗だったであろう少年の白い髪は土をかぶって黒ずんでいた。

 

その少年に女性は声をかける。

「話せる?」

 返事はない。目をあわせようともしない。

「大丈夫?」

 もう一度優しく声をかける。

 またもや返事はない。

 部下が呆れた顔を見せる中、黒髪の女性だけが少年に手を差し出す。

「っ!?」

 驚いた少年の赤い目と女性の目が初めて合う。

 少年は恐怖心からか女性の目の前に綺麗な紅い壁を作った。

「すごいね。これ」

女性の前でキラキラと輝く壁の中は気泡が浮いていて照明に照らされていて宝石にも見える。


その壁が誰もが顔をしかめるものだと分かったのは少年が栄養失調で倒れてからだった。



俺には忘れたいことがあった。

小さい頃、魔法を使って友達、里親を殺してしまったからだ。

みんな目の前で弾けて消える。

自分の能力が怖い。

落ち着くことを知らない俺の能力は人を殺し続けるのかもしれない。

暴走したらみんな死んでしまう。

周りには誰もいなくなる。







        誰か助けて


人を助けるのがガーディアンならガーディアンを助けるのは一体誰なのだろうか。

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