第19話 訓練所にて

 ギルド内を移動、広い所に着いた。

「こちらが訓練場だ。ここで実力を見せてもらおう。キミは魔法を使うんだろ? あの的に魔法を撃ち込んでみてくれ」

 的が六つ並んでいる。アレに当てればいいんだな。


「初級魔法しか使えないんだがこれは全力でやった方がいいのか?」

「一丁前に手加減するつもりか? 壊すつもりでやってみろ、初級魔法で壊せるものならな」


『言質は取ったの。構わん、やってしまえ』

 そうだな、使うのは初級魔法だし大丈夫だろ。

『ちょうど的が六つじゃ、六属性全部使ってやれ』


 手を翳して構えてそれぞれ色の違う魔法陣を六つ構築する。

【賢者】の特性、【並列起動】のおかげだな。


 よっしゃ! いっけーぇ!!!


ドドドドドドババババッ!!!!

ドカドカドカーーーン!!!!


 六種類の魔法を一気に使ったので爆発音も凄い事になっていた。


 煙が収まると燃えている的、凍り付いてる的、スッパリ切れている的、粉々に砕けてる的、大穴の空いた的、ボロボロになっている的が姿を現した。


『うむ! なかなかの出来じゃな!』

 珍しくルナが褒めてくれた。きっと大丈夫だろ。


 と、振り返ると口が開きっぱなしのギルド長がへたり込んでいた。その顎大丈夫ですか?


「えーっと、大丈夫ですか?」

「‥‥‥お前、何故上級魔法を使った‥‥‥?」


「いや、初級魔法ですよ」

「嘘つけぇ!!? あんなデタラメな威力あるかぁ!?」

 いや、上級魔法はまだ使えないし‥‥‥。


「しかも六属性全部使えるの!? なんでぇぇぇ!?」

 えーっと‥‥‥なんでだ?

『我が天才だからじゃの!』

 いや、ルナは答えなくていいから。


「そんで詠唱はどうしたぁ!?!?」

 あー、それは‥‥‥ねぇ。

『【賢者】の特性の一つ、【無詠唱】じゃの』

 あ、そうなんだ。そういえばそんなのがあったかも。




「オホン! ‥‥‥済まない、取り乱した。あの的は魔法防御力の非常に高いモンスター【メタルビートル】の甲皮で出来ていたのだよ。魔法では絶対破壊は出来ないはずなんだが‥‥‥」

 

 あー、そうでしたか‥‥‥。

『メタルビートル! 懐かしいのう、敢えて初級魔法で倒したりしてたものじゃわ。お主の魔力も我に近づきつつあるのかの?』

 そんな事してたのか、ルナよ‥‥‥。


「で、どうでしょうか? 結果は‥‥‥」

「こんな結果じゃ合格と言わざるを得まい。むしろ俺の権限でCランクまで昇格とする」


「え? 良いんですか?」

「こんなデタラメな威力の初級魔法は見た事ないからな。出来るならSランクにしたいところだが‥‥‥、それはいろいろとあって出来ないんだ。済まない‥‥‥」

「いや、いきなりCランクってだけで凄いんですけど‥‥‥」


『Cランクなんぞまだまだじゃ』

 ルナは別格なのはわかってるから黙ってて。


「ただキミの強さは秘密が多すぎる! しばらくはギルドに細かく報告してもらうことになるぞ」

『まぁそれくらいは仕方ないのう』

「わかりました。それでお願いします」


 ともかくCランクになった。

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