第4話 声の正体

「俺はアルフレッド、冒険者だ。お前は誰だ!?」

 俺は叫んだ。

「あぁ、我が名は『ルナ・トリオール』」


「『ルナ・トリオール』!? 物語の!?」

「おー、我は物語になっておるのか!?」


 史上最強の女冒険者『ルナ・トリオール』

 おとぎ話の人物だと思ってたけどまさか実在したのか? 

 というか百年くらい前の人物だろ? 

 本当か?


「‥‥‥さてはお主、疑っておるじゃろ? ならば姿を見せてやろうぞ」


 ぴょこっと現れたのは‥‥‥


 え? スライム?


「我こそがルナ・トリオール!! 全ての【ジョブ】を極めた最強の冒険者じゃ!!」

「いや、スライムじゃねーか!!」


 スライムがうねうね動きながら喋り出す。というより声に合わせて動いているように見えた。


「あー、元の肉体はとっくに滅んでおるわ。常識で考えたらわかるじゃろ?」

「いや、それはそうだろうけど。なんでスライムなんだよ?」

 会話中にぴょこぴょこすんな。


「スライムの身体は寿命が無いからのぅ。我の意識を移すのにちょうど良かったというわけじゃ」

「ふーん、そうか。じゃあな‥‥‥」


 俺は帰ろうとしてスライムに背を向けたらスライムに捕まった。

「待て!! 久しぶりの人間なんじゃ!! もう少しゆっくりしていっても良かろうが!! なんぞ急ぐ理由でもあるのか?」

「いや‥‥‥」


 寂しがり屋かっ!

 急ぐ理由は特にはないけどな‥‥‥、どうにも胡散臭い‥‥‥。

 子供でも知ってる最強冒険者の名前で出てきたのがスライムだったらこんな気持ちになるんじゃないだろうか?


「ふむ、この姿が気に入らないとならば‥‥‥よっと!!」

 スライムがうにょうにょと形を変えて人形のようになった。

「これでどうじゃ? 我の若き日の姿じゃ」


 絵本のルナはスタイルバッチリのナイスバディだったがスライムの変身したルナは胸の辺りが随分とすっきりとしていた。

「絵本にだいぶ似てるけど‥‥‥胸が‥‥‥」

「なっ! 何を言うか!? 我がホンモノじゃ!! コレがリアルじゃ!!」

「あぁ‥‥‥、そうなんだ‥‥‥」


「なんでそんな遠い目をしとるのじゃ?」

 物語のルナ大好きだったんだよ。本では一人称も『わたし』だったのに‥‥‥。

 物語と現実は違うだろうけど。

 なんだかいろいろと夢が崩れていくなぁ。


「あぁ、しんどい。この姿を維持するのは疲れるから元に戻らせてもらうぞ」

 自称ルナはスライムの姿に戻った。


「お主のその強さを見せてもらったが。まさか最初のジョブが【アルバトロス】なのか?」

「‥‥‥その通りだよ。サイテーだろ‥‥‥?」

「最高じゃ!!」


 俺とスライムの声が重なった。


「‥‥‥は?」

「お主のような者がおるとはの!! いやぁ、長年待った甲斐があったというものじゃ!!」


 えらく興奮しているな‥‥‥?

「お主、強くなりたくはないか? 周りを見返したくはないかえ?」

「そりゃ強くなれるのならなりたいよ。でもこんなジョブじゃ‥‥‥」

「お主‥‥‥、最強のジョブはなんだかしっておるか?」


 えっ? 

【聖騎士】とか【大魔導士】とか【竜騎士】とかかな‥‥‥?


「最強のジョブはの‥‥‥」





「【アルバトロス】じゃよ」

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