第20話 ぼっち少女と各々の役割

 会議後、いつも通りみんなでお風呂に入る。

 

 色羽いろはは機嫌が良いのでお風呂場で一人ずつ洗ってあげる。


 アシェラの髪は触り心地も良かった。一瞬こそばかったようで、尻尾をピュンとして振り回していた。

 サーバルは尻尾もシュッとしていて筋肉があるようでみんなより硬かった。

 アメショーの耳の感触が気持ちよくて顔をすりすりした。

 ソラは遠慮すると断ってきたが、問答無用に全身洗った。ずっと顔が赤かった。

 全員が、洗い終わるとブルブルッと身震いしてしぶきを飛ばすので、色羽は雫だらけになった。


 お風呂を上がってベッドでソラとアメショーをワシャワシャした。その後、頭や顎を優しく撫でたりしていると二人は身体をスリスリしてきて三人くっついているとだんだん意識が遠のいた。


 翌朝。


 メインクーン公爵とサーバル公爵は精鋭部隊を編成し、出撃の準備に追われている。出撃には念のため、フレも同行する予定だ。

 スコティッシュ公爵は土メガホンの改造を指揮していて、新たな土台に車輪を着けている。二個余っているメガホンを乗せてネズミさんの国に持っていくためだ。


「こき使っちゃってごめんね」

 重労働で大変そうな感じがしたので声をかけた。


「なあに、色羽様たっての願いじゃからな。みんなも手伝えてうれしいのじゃよ。逆に張り切りすぎで心配なぐらいじゃ」

 スコティッシュ公爵とは二人で初めて話したかもしれない。予想した通り優しいおじいちゃんみたいな感じだった。フニャッと前に垂れている耳がめちゃくちゃ可愛い。


 街の様子は大体見たので、お城の厨房に移動する。


 アメショー公爵とメイドたちがオコメの準備をしていて、庭から抜いたスズラン、ロベリア、スイセンが作業台の上に山積みされている。

 メイドで一番仲の良いアムを呼んで、一応ネコさんたちには花に近づけないようにして、メイドさんたちでみじん切りするように頼む。念のため、なるべく切り口はさわらないようにと、定期的な手洗いをするようにも頼んでおく。


 みんな準備は順調だ。


 昨日ふと聞いておきたいことが出来たので、次はフレのところへ行く。フレは庭園の花壇に腰掛けて日光浴をしながら、カップで何か飲んでいた。

 色羽はその隣に座る。


「準備は万端?」


「あぁ、公爵たちの準備待ちだね」


 二人とも白金の髪が光に照らされ、半分透けるぐらいでとても綺麗だ。


「わたしがここあの世にいる間、あっち現世の時間はどうなっているの?」


「現世の時間は今止まっているよ! それをするために、太陽と満月が空にあるあの日を狙ってたんだ!」


「じゃあ、今はネズミさんの国の増減はないんだね?」


「うん、そうだね」


「そっか……。っていうことは、この戦いで、ネズミさんの教会の扉を調整できるようになったら、時間を動かすために、わたしはあっち現世に帰らないといけないってことか……」


「……さすが……だね」


 二人は空を見上げる。


「……でも……。これが終わったら、創造神様にお願いしよう。いつでもこっちあの世に来れるように! あっちの時間までは止めれないけど、僕と色羽の瞳の力があれば、行き来することは可能なはずなんだ」


「ほんとっ!?」


 色羽は思ってもいなかったチャンスに立ち上がる。


「うん! 君の瞳。ブルーは水の力。ブラウンは土の力。そして僕の瞳。レッドは火の力。グリーンは、緑か風の力。オッドアイで異なる力のある色が四つあればゲートは開く」


 フレは、経験があるかのように確信した顔をした。

 色羽は、それに気づいたけど聞かないことにした。


「よしっ! なら早く終わらさなきゃね! でね、今からちょっとネズミさんの国に偵察に行って来ようと思うの。兵法三十六計の打草驚蛇だそうきょうだだね」


「ちょ! それは危ないしだめだよっ!」


 びっくりしすぎてフレも立ち上がる。


「あわよくば、反間計はんかんけい協力者スパイも見つけたいんだよね!」


 フレの言葉を無視して話を進める。


「偵察して建物の構造、教会の場所、お城を把握したいの。じゃないとネコさんに被害が出るかもしれないし。なるべく被害は避けたいもん! あと、ネズミさんとこの人さんはかなり痩せていたから、おにぎりあげて仲間になってもらえたらより攻めやすいし。その隙をついたら、うまくいけば王様だって、捕まえられるかもだよ!」


「ねっ!」


「うーん……ザッ──」

「ザッシュは来てもらうつもり! 今からアシェラ女王にお願いにいく予定だよ!」


 色羽はフレが条件を言う前に先に提案した。


「仕方ないなぁ! 危険を感じたらすぐに戻ってくること! あと、思念伝達もだよ!」


 そういって、色羽の頭を撫でた。


 アシェラ女王も渋々だが了解してくれた。

 

 すぐに厨房に移動して、メイドたちに頼んで美味しいおにぎりを用意してもらう。ホワイトソースは色羽が作って、卵炒めはアムが、お肉はソラが調理しておにぎりに入れてもらった。


 適当な器がなかったので、大きな布を濡らして絞ってから入れれるだけ入れた。なんだか、サンタクロースみたいになった。おにぎりとおにぎりの間には毒のない葉っぱを挟んでおいた。大きな袋が二つできた。


「じゃあ、いってきます!」


 この後の流れはみんなに伝えたのでこっちは大丈夫だとアメショー公爵がニコッと笑いかけた。


 城壁からまた飛び降りる。首のネックレスが揺れ、白金の髪がパッと広がる。

 おにぎり袋は一つずつ持つ予定だったけど、ザッシュが風の魔法で軽くして持てるからと両肩に抱えて影に消えた。


『じゃあ、フレ行ってきます!』

『気をつけて! 魔の森にいるから何かあったらすぐ呼んで』


 最後の挨拶を済ませ、蜃気楼ミラージュの魔法を使い、見えなくしてから空を飛んだ。

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