第4話 ぼっち少女のお手伝い
「あれはメインクーン公爵だよ。みんなからの信頼も大きいし、いざというときは声も通るよ!」
続いて、見た目は細そうな女性が出てくる。こちらも馬に乗っている。
「つぎは、サーバル公爵だね! かなり俊敏だし攻撃的だけど、仲良くなれば優しい女性だよ!」
彼女は金髪でボーイッシュな感じの髪型で、黒の斑点模様が耳と尻尾にある。綺麗だけど、どこか芯のあるような出で立ちをしているように見えた。
そのあと馬に乗った人が五十人ほど出てきた。おそらく行動を急いだため、あの人数が精一杯だったのだろう。サーバル公爵はその五十人を率いてあっという間に移動を始めた。かすかだが、左の扉付近からだろうか、人を集めるような声も聞こえてきている。
色羽は一瞬人数を見て再考したけど、問題はなさそうなので何も言わなかった。
正面の扉の方では、十人が一組で固まり、移動が始まっている。
「なんだかここから見ていると
どこかまだ他人事のような気がしていた。でもしばらくその様子を見ていると、自分が提案した通りに眼下で集団が動いて、この後、戦いになって誰か死んじゃうかもしれないという恐怖が生まれ、次第に背筋が凍っていくような感覚に陥った。
「色羽どうしたの? 顔色が悪いけど?」
そんな様子にフレが気づいて、肩にそっと手を起き、声をかけた。
「ね……ねぇ、この戦いで死んだりとかはあるの?」
フレはキョトンとした眼をした。
と、次の瞬間、その表情は緩み、声をあげて大笑いをし始めた。その姿を見て色羽は、もっと意味がわからなくなり、呆然と立ち尽くしている。
「ごめんごめんっ! 失礼だとわかってはいるんだけど、面白くて我慢できなかったよ。ここはあの世だよ。だから、みんな既に死んでる状態だから」
「でも、それなら倒されたらどうなるの?」
当然だ! 色羽からしたら、この世界の
「ネズミ族が倒されたらその瞬間に霧のように消える。でも、再度、魂は浄化されてチュート帝国の教会裏の神樹から、生みだされるんだ。例外的には、色羽の
色羽はしばらく考えるようにして頭を整理している。
「君が心配しているようなことはおきないから、安心して大丈夫だよ」
フレが優しい眼をして、口角をあげてニコッと微笑む。そんなこともあって、だんだんと色羽の顔色は良くなり、瞳にも精気が戻った。
そんな話をしているうちにネコ族の反撃が始まろうとしていた。メインクーン公爵がネズミ族の集団にその距離百メートルの所まで迫っている。
「いけ~っ!」
「「「「お~っ!」」」」
メインクーン公爵の大地を揺るがすような大声が一帯に響き渡る。
その合図とともにサーバル公爵がネズミ族の後ろから虚をついて攻め立て、逃げ道を塞ぐ。メインクーン公爵が
サーバル公爵の馬隊は、森の手前まで追撃をして戻って来ている。
「ネズミ族は魔の森に入っちゃったね。あれはもう戻ってこれないかな。色羽の作戦のおかげであっさり終わったよ。ありがとう」
色羽には何かひっかかる内容があったようだ。
「魔の森って?」
「魔の森はその名の通り、魔獣が住む森だよ。簡単に言うと、現世で悪いことをして死した魂はこちらでは魔獣になるんだ」
色羽は、また頭を整理するようにしばらく考えてから、自分の考えを整理するように質問を投げ掛けた。
「ここはあの世。死した魂は、洗浄されて帝国内で生まれる。動物は人の世話をする。ただし、現世で悪いことをしたら魔の森の魔獣として生まれる。ここからは推測だけど、馬がいたことから、一定の家畜はいる。ニワトリ、牛、羊あたりかな。家畜は現世の魂とのリンクはない? どう? あってる?」
フレは尊敬するような眼差しで色羽を見つめる。
「さすがだね、その通りっ! 家畜として存在するものは、魂のリンクはない。衣服と同じ扱いだね。でも、鳥の国や、牛の国はある。そこでは魂のリンクはあるよ」
「もう一つ付け足すと、今いるここはゴニャー帝国でネコ族の領土で浮島になっている。浮島の淵は、魔の森で囲まれている」
また、色羽は難しい顔になる。
「とりあえず、ゴニャー帝国城でゆっくりしてから説明するよ。さあ、来て!」
そう言うとフレは、色羽の手を取って、優しく片手を繋いだ。
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