第107話

 河口湖駅まで車で送ってもらって、彩羽は帰路についた。改札を抜けて振り向くと、涼太が手を振っている。彩羽も涼太に向かって手を振り返した。「待ってて」と涼太の口が動くのが見えた。

 ふと自分の左手に目が行き、彩羽は気が付いた。小指に光る小さな赤い石。外れないままのピンキーリング。

 そういう事?

 昨夜の、どこから来るのか分からなかった涼太の自信。その理由はこれか。滑稽な勘違いに、彩羽は泣きそうになった。

 いいわよ。待っててあげる。世界が終わるとき、一緒にいてあげる。彩羽は思いを込め、再び大きく手を振り返した。


                                 Pinky

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る