第103話
「ドクターは今日、こちらに来られますか」
うとうとしていた耳に、涼太の声が聞こえてきた。
「さあ、どうかな。どちらにしても話を通しておかないとね」
これは仲村さんの声。ドクターって誰だろう。
頭に靄が掛かる。『M』の話を消化しきれないまま、彩羽は部屋の隅で泥のように眠った。
夢の中で誰かと手をつないでいるような、そんな気がした。
目が覚めた時、壁の時計は十時を指していた。電灯の光の下で、涼太と仲村が話しているのが見えた。
「今日はもう来られないんでしょうか」
時計を見て涼太が言う。
「誰が来るの?」
そう言った彩羽に顔を向け、「目が覚めたんだね」と微笑んだ涼太は、一旦仲村に目を向け、頷くのを見てから彩羽に向き直った。
「本部の人。みんなドクターって呼んでるけど、名前は知らないんだ。ここは本当に末端だから、入って来る情報は無いに等しくて。でも、その方がいいのかもしれないね」
そう言って、涼太は笑った。
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