第3話:ドレッドノートで朝食を (Breakfast at Dreadnought's)・忘れ物03
イリナさん――所長に対し尊敬の念の欠片もない態度は相変わらずなんだな。しかし、彼女という書類仕事のエキスパートが居てくれるから、僕は依頼された事件を追うことのみ集中できる。だから、態度ぐらいで叱るわけにもいかないんだよな……
「所長、いますごい不満げな表情でしたね」
「そ、そんなことないよ~というか、早く降ろしてくれたら助かりますけど……」
「もうあの表情見ちゃったので忘れません。一生恨みまーす」
「勘弁してくださいよ、僕はただここから降りたいだけですよ~!」
「もおおお……うるさくてしょうが無い人ですね。わかりました。ちょうど使い捨てのテレポート装備『Send it!』の設置が完了いたしましたので、いまから地面に転送しまーす」
「いちいち報告しなくてもいいです!1秒でも早く頼みます!」
僕の緊急な声に返事を返さず、イリナさんは転送ボタンを押した。そして、待つこと30秒――え?『Send it!』の転送時間はたった9秒のはずなのに、どうなってるの!?
「所長!!いや、レーヴ。油断したな?貴様はここで終わりだ」
「は!イリナさん!?なんでいきなりあなたが僕の後ろに!?しかも、何を寝ぼけたことを……???」
「ふふふ!何も知らないまま削除されるがいい。そっちのほうが苦痛もなかろう!!」
「や、やばい……!?!?こいつ、イリナさんの顔をしているが、なんか全然違うよ!!」
「終わりだ!!!!レーヴ!!!!」
削除って何だよ!?そりゃ、ドレッドノートの外に広がる砂漠で倒れたら、時間の経過と共に全身が干からびては、意識も薄れて、やがて思考も止まる。まさに生きる化石となるケースも存在するが――誰もそれを削除とは言わないもんな!?じゃあ、一体こいつの言う削除とは何だよ?やばい……いまの僕には対抗手段が全くない!!!
「諦めてたまるか……諦めてたまるか!!僕はまだ死ねないんだ!!!だから思いついたんだよ!さあ、聞いて驚けよ……??」
「もう遅いわ!!貴様には見えないのか?バカは惨めなものだな?この俺様の手はすでに貴様の腕を掴んでいる!!つまり、今からニルヴァーナ粒子さえ流し込めば……レーヴ、貴様は終わりなのさ!!」
「僕は依頼人を自由自在に呼び出せるホットラインを付与されているんだ!!そう!!探偵協会に所属する者の特権だよ!!あんたの相手は僕じゃない!!!もう遅いのは、イリナさんのマガイモノのあんただよ!!!」
僕は奥歯に仕込んである感触デバイスを舌で回し、依頼人呼び出しホットラインを発動させた。そしたら、僕の周りに白い閃光が発生し、それはやがて人の形に変わっていく。ついさっき見たあのシルエットだ。アンバランスなスーツ姿のあのシルエット……
「そう!!俺こそは世紀の大怪盗、カムイ・コトブキだ!!もうラットボーイじゃないんだと何度言えばわかるのだ、ラニアケアさんよ!?っと……あれ?俺たち変なとこにいないか?」
「ラットボーイ、危ない!!伏せて!!」
「いーや、伏せねえよ。代わりにこれだぜ!ヤチコちゃん!!!」
「あいよ!アルキュビエレ・ドライブ!!!」
一瞬の出来事だった。カムイさん達が現れて、イリナさんのマガイモノに襲われそうになるも、アルキュビエレ・ドライブなるニルヴァーナ能力で僕たちは瓦礫の山の天辺から移され、だいぶ離れたところで気がついた。
――つづく――
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