天狗の双六
小烏 つむぎ
天狗の双六 壱
◇ 天狗の双六 壱 ◇
真冬の凍てついた山道に突然地響きのような声が
「
その声は雪を被った木々のその上から聞こえるようであり、踏み荒らされた雪道の下から聞こえるようであり。山の端を巡るように続く街道の先から聞こえるようでもあった。
居合わせた三人の旅人は震えながら身を寄せ合い、それぞれ声が聞こえたような気がする方向に目を凝らした。小正月が終わったとはいえ日が暮れるにはまだ早い
昼前に峠の茶屋で一緒になった三人である。たまたま行く方向が同じであったので共に歩いているだけで、お互い面識はない。
一人目の旅人は、
二人目の旅人は、二山越えたところにある生まれ在所の節分の火伏せ
三人目の旅人は、誰より年かさだったが誰より怯え腰が引けていた。この男もまた、男の里で行われる鬼追い鳥追いの祭り・
そうこうしているうちにも周りはどんどん暗くなり、先ほどまで見えていた山道の先も、空も、まわりの木々さえも見えなくなった。三人はますます身を寄せ合ってあたりを伺った。
「あ」
女が何か思いついたように小さく声をあげた。ふわっと白い霧が口元から生まれた。
女は冷えて真っ赤になった指を器用に動かして、
そのぼんやりとした明かりの先に、何かチカリと光るものが宙に浮いていた。それを見ていた二人目の旅人が、何かに操られるように光の先の小さな塊に手を伸ばした。
宙に浮いていたソレは小さな象牙色の十二面体の
「
再び暗闇から大きな声が響いた。
二人目の旅人は手の中でズシリと存在感を増した象牙色の
男は震える手で、十二面の
「
何かしら感情が乗った声が空から聞こえた。
「
残りの二人はお互いに相手を
「
はっきりと残念そうな声が、頭上から聞こえた。
「
白く柔らかそうな男の薄い手のひらの上で、十二面を持つ
投げられた
「
明らかに笑いを含んだ声が、最後に
◇ 天狗の双六 弐 につづく ◇
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