第6話 ガチムチ黒人マッチョ! その名もボブ!!
「な、ななな、何者ですか!! あなたぁぁぁぁああああああ」
予想だにしなかった展開に、思わず叫び声を上げてしまう。
強面の黒人マッチョは、そんな私を睨み付けると、白目を剥いて、その場で固まってしまった。
「な、何なんですか……」
マッチョが何をしたいのか。
その意図が分からず、うろたえてしまう。
そんな時、
「やー、ボブ。そんなところで何をしているんだい?」
事務室と書かれた扉の中からマツザカがひょこっと顔を出した。
「ま、マツザカさん! いるなら返事をして下さいよ!!」
「ん? ヒカリさんと話していたのか。はは、すまない。俺は他人から罵倒される声以外は聞こえづらくてね。俺を呼ぶときは、『いつまで待たせるんだゴミ。さっさと出てこい豚野郎』とでも叫んでくれたまえ」
「い、嫌ですよそんなの!!」
「ははは、恥ずかしがることないさ。ユキ嬢なんて、もっと汚い言葉を使ってくれるんだから」
「……マツザカさんと話していると頭がおかしくなりそうです」
「うーーん、その目いいねぇ。元気が出るよ。中に来て、もっと蔑んでくれ」
そう言って、マッチョを無視して、中に入ろうとするマツザカ。
「ちょ、ちょっと待って下さい! この人はいいんですか? ってか、誰ですか! この人!!」
私は、マツザカを呼び止め、マッチョを指さした。
「ん? ああ、ヒカリさんはボブと会うのは初めてだったね。彼の名前はボブ。寡黙なイケメンマッチョでうちのメンバーさ」
「め、メンバーですか」
「ああ、そうとも。気絶してても男前だろ」
「は、はぁ。え? 気絶してるんですか!? この人!!」
「ははは、ボブは極度のビビリでね。恐らく、ヒカリさんの叫び声に意識を持って行かれたんだろう。なぁに、10分もすれば蘇るさ」
「えぇ……」
目の前がクラクラしてきた。
ただでさえ、インパクトの強い外見をしてるのに、ビビリって……。
私の頭では処理仕切れない情報量だった。
「そういうわけだ、ヒカリさん。ボブはそのままにしてあげたまえ。ささ、中へ」
「はぁ、し、失礼します」
マツザカに促され、事務室に入る。
すると、マツザカさんは唐突に四つん這いになり、
「さぁ、座りたまえ」
満面の笑みでそう言った。
「座りません、さっさと椅子に座って下さい」
私は、マツザカの言葉を無視して、椅子に座った。
「ふむ、椅子としては器量不足だったということか。俺もまだまだだな」
そう呟き、地面に正座するマツザカ。
なぜか、膝の上に40kgと書かれたおもりを置いている。
「全く、あなたは……。突っ込みませんからね」
「何がだい?」
「もういいです。はいこれ」
マツザカの行動に一々突っ込みを入れていると日が暮れると判断し、本題を済ませるために、さっさとレイカさんから渡された紙を渡すことにした。
「ふむ、オストリッチか。踏まれがいがありそうだ。引き受けよう」
「……、本当に良いんですか?」
「良いに決まっているじゃないか?それとも、ヒカリさんはもっと痛そうなクエストが良かったかな?」
「すみません。聞いた私がバカでした」
もしかしたら、引き受け手のいないクエストを受けることで、困っている人を助けようとしてるのかも、と思ったが、この人に限ってそれはなさそうだ。
「ふむ、面白いな、ヒカリさんは。もっとお話したいところだが、残念なことに今日は時間がない。直ぐにクエストに出発するとしよう」
「は、はぁ。え? 今からですか??」
「ああ、ハルキ君から今日中に終わらせて欲しいと頼まれている書類が沢山あるからね。モタモタしていられないよ」
「なっ、それなら別に今日じゃ無くても、また日を改めて討伐に行けばいいじゃないですか!」
「はっはっはっ、それじゃあ面白くないだろ。書類仕事は終わるか終わらないかのギリギリを攻める。それが私流だ」
「はぁぁぁぁぁ」
思わず、大きなため息が出てしまった。
この人に振り回されてるハルキが可愛そう……。
「というわけだ。早速、準備を整えてボブと一緒に外の草原まで来てくれ! それじゃあ!!」
そう言って、服を脱ぎ始めるマツザカ。
「な、キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!! 何やってるんですか!」
「む? 今からふんどしに着替えるところだ」
「そ、そそそそれなら、私が見てないところで着替えてくださいよ!!」
「ははは、私は見られる方が興奮するんだ!!」
「最っ低っです! もう知りませんから!」
マツザカにそう告げ、椅子から立ち上がる。
「む? どこに行くんだね??」
「家でクエストの準備をしてくるんです! 私はマツザカさんと違って見られて興奮なんてしませんから!!」
「ふむ、そうだったか。なら、仕方ない。それと、今から装備を調えるんだったら、対空装備だけは忘れないようにしてくれ」
「は? 対空ですか? オストリッチは鳥型の魔物ですが別に飛べな……キャッ」
出入り口の近くでマツザカと話していたため、開いたドアにぶつかってしまった。
「いたた……、すみません、って」
そこにいたのはさっきよりも強面の顔で立っているボブだった
「きゃ、キャアアアアア」
ボブの顔に驚き、声を張り上げてしまう私。
そして、私の声を聞いて、再び白目を向きながら気絶するボブ。
「ははは、このパーティーも賑やかになってきたね」
マツザカは、そんな私達を見て、愉快な笑い声を上げるのだった。
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