第7話 ドロミオーネは居て、勇者パーティーは戦う(2)
【グォォォォォ……】
湖の真ん中で、我が物顔で控えるドロミオーネは、4本の腕に役割を与えて使っていた。
2本の腕は湖へと突き刺して湖を穢れさせながら、体勢を整える。
そして残り2本の腕で、先程と同じように、大きく開けた口の中に腕を突っ込んで、ゾンビを数体ばかりその手に掴み取っていた。
そして、掴み取ったゾンビを、また投げようとしたその瞬間----
【グォン?】
ドロミオーネの身体が、停止した。
ナウンが湖全体を凍てつかせる大魔術を放って、湖そのものを凍らせたのだ。
湖そのものが凍った事により、湖に突き刺していた2本の腕もまた凍って動けなくなったからだ。
「"生命の冒涜者よ、そのまま消え去れ"」
そんな動けなくなったドロミオーネに向けて、シャルは神へと捧げる祝詞を唱え始める。
それは本来であれば、多くの信徒達が心を1つにして三日三晩、神へと祈り捧げる事で初めて発動する神聖術の上位術。
そんな神聖術を、聖女であるシャルはたった数秒で、祝詞を終え、ドロミオーネへと向ける。
「----【
シャルが唱え終わると共に、ドロミオーネの上空に光の魔方陣が生まれる。
魔方陣の中心に光が収束していき、ドロミオーネに向けて光の柱が放たれる。
【グアアアアア!!】
それはドロミオーネの、悲痛な叫びであった。
----ただし、神聖術を受けての叫びではなかったが。
ドロミオーネは湖に突き刺さった事で、凍って動けなくなった2本の腕を"捨てた"。
残った2本の腕を使って、自ら凍って動かない腕を斬り捨てたのである。
そして毒々しい血を氷の上に垂らしながら、ドロミオーネは滑り逃げたのである。
「----っ!!」
神聖術が外れたことに、シャルは焦りを浮かべていた。
神聖術はその性質上、神へ祈りを捧げて発動する技であり、動けない相手に対して狙い撃つ類の技。
無論、即座に発動できる神聖術も、シャルは覚えているが、それはゾンビ達には効果を示すだろうが、あのドロミオーネに効果があるとはとてもではないが、思えない。
「----やはり、勇者の出番だね! 3人とも、援護よろしく!」
勇者セラトリアは、そう言って凍った湖の上を駆け抜けて行く。
聖剣片手に、勇者は神聖術を発動する。
勇者もまた神聖術を使えるが、聖女に比べると仲間1人を癒すのがやっとであり、先程のような空から降り注ぐ光の柱のような技は使えない。
しかしながら、勇者は、勇者だけにしか使えない特別な神聖術を使える。
「----"神よ、勇者の名のもとに力を解放せよ"。【
それこそ、【聖なる剣】。
聖剣に対して、神聖術を纏わせることにより、本来であれば不可能な近距離で強大な神聖術を相手へ叩きこめるのである。
【グアアア!!】
ドロミオーネも、ただ手をこまねいて待ち構えている訳ではなかった。
かのバケモノは大きな口を開け、中から大量のゾンビを出して、自らに迫る勇者に向けて放ったのだ。
----言うなれば、ゾンビの弾丸。
「ボクの出番、多くないかな!?」
賢者ナウンはそう愚痴りつつ、炎の魔術を放って、弾丸代わりのゾンビを燃やしていた。
----ヒュゥ~!!
そして、腹にある大きな目玉に、弓矢がぶつかる。
ぶつかった弓矢は大きな目玉に当たると共に、
【ガアアアアア?!】
「(なるほど、目に"
----言うなれば、『殴る弓矢』という所か)」
勇者は呻くドロミオーネの姿を見ながら、やはりアルテは強いと再認識し、そのまま懐へ潜り込む。
【グアアアアンッ!!】
ドロミオーネは逃げねばと思って、腕を使って滑っての逃走を試みるも、その2本の腕はシャルの神聖術、そしてアルテの『殴る弓矢』にやられる。
2つとも威力こそ腕を吹き飛ばすほどはないが、一瞬でも腕を動かす邪魔となって、セラトリアの助けとなっていた。
「----喰らえ、勇者の一撃を」
その技に、名前はない。
なにせ、名前など付けなくても、それは魔物達にとっては最悪の一撃なのだから。
魔物を退治する強力な神聖術を纏った聖剣。
その聖剣を高い剣術スキルを持つ、身体能力に優れた勇者が放つだけ。
【グアアアアアアアアアアアアア!!】
ドロミオーネは醜く生き抗う事すら許されず、ただ沈黙と共に、塵となって消えていく。
ゾンビ達の王ドロミオーネの消滅と共に、周囲に居たゾンビ達もまた形を保てずに、消えていく。
「(よしっ、四天王ドロミオーネの撃破確認! これでアルテも、故郷へ帰る決心が出来るというものだ!
後はアルテが帰る日を見計らい、ナウンやシャルを置いてアルテと共に追放されるだけ! 実に簡単だ!)」
ドロミオーネを討伐したセラトリアは上機嫌で、勇者パーティーの3人に合流して----
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