第6話 ドロミオーネは居て、勇者パーティーは戦う(1)

 ----結論から申し上げると、四天王ドロミオーネは森の中央部分にある湖の辺りに潜伏している可能性が高いそうだ。


「ボクの魔力調査の魔術を用いての結果だと、そこに強大な死の魔力があるという結果が判明したのさ。ドロミオーネが率いるゾンビ達を始めとした死を纏う魔物達は、多かれ少なかれ死の魔力を放っており、今回はその死の魔力のみに重点を置き、この近くに限定して魔力探知を行ったのさ」


 そう理路整然と話すのは、【賢者】のナウンである。

 彼女は寝不足になってしまうくらいに、徹夜でその魔力調査を行っていたらしい。


「そんなに、難しい魔術なのか?」

「いやいや、難しいのは調整だね。調査魔術は基本的には魔力の最低値や最高値を定める設定の研究はされているんだけれども、死の魔力という特定属性に限定するというのは初めての試みだったからね。いくらボクが天才だとしても作るのに時間がかかってしまったが、これを応用すればさらに----」


 と、話が脱線しかけたので、慌てて止めさせて、調査結果だけ受け取る。


「調査結果だけ言うと、森の真ん中にある湖。そこに強大な死の魔力が集まっているのが確認できたんだよ。大きさから言えば、この森で一番強い死の魔力だね。可能性としては、四天王ドロミオーネのモノである可能性が極めて高い。故に、ボクはそこに行くべきだと提案するのさ」

「凄いじゃないか、たった一晩で見つけ出すとは……流石だな、ナウンは」

「褒めても何も出ないよ。なんなら、追放されてくれないかい?」


 なんで、褒めたら追放という形になるのか、意味が分からんのだが。


「まぁ、ともかく、湖になにか死の魔力を蓄えた化け物が居るのは確かだし、湖に向かうべきだと思う訳さ」

「なるほど、そこが目的地な訳ね」


 ドロミオーネが居るかは分からないが、なにか狂暴なのが居るのは確かみたいだ。

 今日は、そこに行くみたいだな。


 うん、了解した。



「----はいはいっ! 兄さん、私も神聖術を使って調べた結果、湖に怪しき者達が集まってるという情報を得たよ」

「神頼みじゃないですか……」


「あぁ、勇者である私にも、感覚で理解したさ。凄いだろう?」

「ただの勘じゃん……」


 セラトリアとシャルの2人も、分かってた発言をするが、ナウンに突っ込まれてる。

 ……あっ、2人ともなんか、イラついてる感じがするな。

 顔に青筋が浮いてる気がする。

 

「えっ、えっと、頑張って……」

「あぁ、勇者に任せたまえ」


 看板娘さんの応援に応える、勇者。

 他の村人からも頑張ってくれという、熱い応援を受けつつ、ドロミオーネを倒すため、俺達は湖に向かう事にしたのであった。



 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



 村から森の中に入って行って、早2時間。

 順調に進んでいき、俺達は件の湖へと辿り着いていた。


 そして、湖の真ん中にバケモノが居た。

 10メートルを軽く超すであろうそのバケモノは身体中から死の気配を漂わせており、綺麗だったであろう湖の水は薄汚れた泥のような色に変わっていた。


【ウゥゥゥ……】


 "それ・・"は足がない代わりに、4本の腕を持つ腐敗した身体のバケモノであった。

 4本の無駄に肥大化して長い腕は湖の水に触れると共に、ただでさえ汚い湖の水を腐らせて腐敗臭の泡を作り出させ、顔の真ん中と背中に大きくて不気味な目玉がグルグルッと動いていた。

 それ以上に特徴的なのは、腹の真ん中に大きく開けられた大口であり、そこには何十本にも及ぶ牙が並んでいた。


【ブッハーッ!】


 バケモノは大きな口を開くと、中からゾンビ達がうようよと出て来る。

 ゾンビ達は身体から外へとゆっくりだが歩き出しており、長い腕で出て来るゾンビ達を外へと出す。

 そして口の中からゾンビ達を出しては、口の外へと出して、そのまま長い腕で森へと放り投げていく。


「居たぞ、あれが敵だな」


 勇者様がそう言わずとも、その場にいる全員が理解していた。

 あの巨躯のバケモノこそは、四天王ドロミオーネである、と。


「死の強い魔力を纏っている。ボクが見つけたのもあれだね」

「小石でも投げるかのように、ゾンビを投げてるね、兄さん。完全にアレ、命の冒涜者だよ」


 ナウンとシャルの2人も気味が悪いと頷き、俺もまた同意目的で頷いていた。


「----行くぞ、勇者パーティー。戦闘開始だ」


 勇者セラトリアの号令の元、俺達と四天王ドロミオーネの戦いが始まるのであった。




 ===== ===== =====

 【四天王】ドロミオーネ


 生息地;王国森林地帯マチラ湖付近


 能力;ゾンビ生成


 詳細;王国森林地帯に出現した、強大な死の気配を持つバケモノ。身体の中にゾンビを生成するための、何らかの機能があるらしく、ゾンビ達の王であるドロミオーネだと断定しての討伐を開始

 長くて肥大化した4本の腕を振るいつつ、視野の方は顔と背中にある大きな目玉にて把握している模様

 このまま討伐せずに放置すると、身体からゾンビを無限に生成し続け、そのゾンビを長い腕で森の方まで飛ばして、どんどんゾンビを生み出すモノと思われる

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