パーティーメンバー全員から追放を命じられるおっさん、実は全員から「私だけは理解してるから」と言われていた
帝国城摂政
3人の追放希望者は、おっさんと一緒に居たい
第1話 勇者は追放したいが、おっさんを保護したがる
----勇者パーティー。
それは、魔王を倒すために、国が作り出した最強の
魔王とは数百年に一度、この世界に誕生する魔物達の王であり、かの魔王は誕生すると共に人類を滅ぼそうとしてくるため、滅ぼされない対抗策として勇者パーティーが結成されるのだ。
つまり勇者パーティーとは、魔王を倒すために結成される、最強の者達によるパーティー。
そこには各国の思惑と意地、そして『魔王』と言う人類共通の絶対悪を倒すために、このパーティーは作り出された。
当然ながら、この勇者パーティーは、仲良しであるはずもない。
各々の国の事情も違えば、人種、信じるモノ、目的や目標。
彼ら彼女らは、ただ単に集まっただけの、寄せ集め。
だから、当然のことながら、予想すべき事ではあったのだ。
「----【狩人】アルテ。貴様を勇者パーティーから追放する」
ある日の朝、宿屋で寝ていたこの俺。
そう、勇者パーティーの俺、アルテは、【勇者】様からそう言われるのであった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
俺の名前は、アルテ。
29歳の、ただ長く生きてるだけの、おっさん狩人。
数年前まで俺は、とある小国にて、弓を武器にして細々と稼ぐ、ただの冒険者であった。
そんな俺が、勇者パーティーに選ばれるだなんて、初めは冗談かと思った。
なにせ、俺は確かに冒険者ランクの最高位であるSランクではあったが、既に29歳。
世間一般的には、「おっさん」だの、そう言われるような年頃であったからだ。
「腰がきついな~」などとぼやくようなおっさんを、誰が勇者パーティーの一員として選出したいと思うだろうか?
しかも、俺以外のメンバーは、全員が美少女。
そして、10代にして、既にSランク相当の実力を持っていると聞くではないか。
ますます、俺なんかがとは思ったが、国からの命令である以上は、従うべきだと俺はそう思って、勇者パーティーの一員に入った。
そしたら、さ。
俺の子供くらいの年齢の少女達が、全員バッタバッタと活躍するんだぜ?
【勇者】という称号に選ばれた、王国最強の騎士姫。
【賢者】という二つ名を持つ、帝国屈指の天才魔導士。
【聖女】という肩書きを授かった、教会からの秘蔵っ子の聖女。
3人が3人とも、魔王を1人で倒せるんじゃないかといったぐらいの実力の持ち主だ。
なんなら、天才魔導士と聖女様は、本来は後衛で敵を倒す役割なのにも関わらず、俺なんかよりもよっぽど身体能力も高いぐらいだ。
だから、いつかは俺は追放されるモノだと思っていたよ。
3人よりも弱くて、なによりおっさんのこの俺はさ。
「アルテ、貴様は弱い。我が勇者パーティーには相応しくない男だ」
そう堂々と言ってのけるのは、【勇者】セラトリア・ガルガンディア。
れっきとした王国の王女であり、そして我が勇者パーティー最強の戦士。
剣を振るえば、魔物は全て薙ぎ払われ。
軽い怪我を負おうとも、自分で治せる治癒術を覚えており。
武器がなくても、一対一なら倒してしまうんじゃないかと言うくらい、強い身体能力を持つ。
彼女には、合流した当初から、睨まれていたなぁ。
俺なんかよりも10センチは背が高くて、なにより目つきも鋭い。
おまけに娼館の女どもがお子様に見えるくらい、華麗なボディラインをしてるんだぜ?
おっさん、一緒に冒険しながら、このドギマギした気持ちがバレたらどうしようかって、10以上は下のこの勇者様に怯えていたさ。
多分、俺が嫌いなんだろう。
「あぁ、俺は弱いな。勇者パーティーに相応しくない」
「冷静な自己分析でもしてるつもりか? そう考えるだけの知性があるなら、合流した瞬間には尻尾を巻いて帰るべきだったな。貴様が弱いことなど、他の2人も同意見で、合流した当初から言っていたさ。
いまさら、いい子ぶったところで、貴様の知性が高くなるわけではないぞ」
辛辣、である。
だが、もう良いさ。
俺はこれでお役御免。
勇者パーティーからの離脱ともなれば、故郷に帰った時にどう言われるかは目に見えている。
だが、おっさんと彼女達を比べれば、おっさん1人帰ったところで、何も言われんさ。
「あぁ、分かった。追放だな。おっさんは、大人しく退散しておくさ」
「----そうか、それで良い」
----これで、私も付いて行ける。
「え?」
俺は驚いたね。
おっさん、追放されようと思ってたら、なんか勇者様まで付いて来る発言が聞こえて来たよ。
「なにを呆けている? 貴様は勇者パーティーには相応しくない、他の2人もそう言っている」
それは良く知っている。
【賢者】と【聖女の】の2人とも、俺の顔を見る度に「弱い」だの、「おっさんは後ろで離れてて」だの、色々と辛辣に言われてきたからね。
いくらその通りだと思っても、言われる度にちょっとだけ
「それだからこそ、貴様を勇者パーティーから除外させたがってるのだ。
この私は違うぞ。貴様の実力は、私が一番理解している。私だけが、だ」
その証拠に、とばかりに、彼女はつらつらと、俺への賛辞の言葉を並べ立てていく。
「貴様は遠くの敵をいち早く見つけ出して、けん制し、あまつさえ可能なら迎撃まで行ってくれている。確かに近距離の敵に関しては、私達に及ばぬ点もあるが、それは適材適所、そもそも比べるべき所ではない。
私達がここまで戦ってこれたのは、貴様が、いや、アルテが誰よりも敵を倒して、私達の所に来る魔物を弱らせてくれているからだ。
----他の2人は気付いていないが、私は、アルテこそが、このパーティーの要だと、そう理解しているつもりだ。そんな実力者を追放させたがる2人とは、愛想が尽きた。だから、アルテの追放と同時に、私も一緒について行こうと思っている。
安心しろ、あの2人なら、2人でも魔王を倒せるだろう。私達は何の心配も、不安もせず、大手を振って、追放されようではないか。
我が王国は貴族社会、確かに小国の一平民だったアルテには、厳しいものかもしれんが、王女たる私が身の安全、そして生活の永久的な保護を約束しよう。
なぁに、返事はすぐにとは言わん。私も、2人と同じくらい酷い事を言ってきた自覚はある。
すぐさま許してもらおうなどと、甘い考えは持ち合わせてはいない。だが、忘れないで欲しいんだ。
----私が、アルテの実力を、一番理解してるんだと」
【勇者】セラトリア・ガルガンディア。
俺が知る限り、誰よりも自分に厳しく、他者にも厳しかったであろうその騎士姫様はそう言って、部屋を後にした。
俺はセラトリアが、勇者様が俺の事をそこまで評価してもらってると嬉しくなって----
「どうしよう、"他の2人も"同じこと言ってたんだけど」
----【賢者】と、【聖女】。
そう、他の2人にも、追放と同時に、自身が一番俺を評価してるんだと言われていて、どうしようか悩むのであった。
===== ===== =====
【勇者】セラトリア・ガルガンディア
出身地;王国の王都
年齢;17
役職;勇者
得意な事;卓越した剣術、全属性を網羅した魔法攻撃、自分の治療なら簡単に出来てしまう治癒魔法
苦手な事;金銭感覚のズレなど庶民感覚のなさ
特記事項;血族主義、貴族社会たる王国出身の第三王女にして、現勇者パーティーのリーダー。勇者とは神託によって決定された選ばれし者であり、その期待を裏切らない武術、魔法、治癒の全てに高い適性を持つ万能者
努力をほとんどせずにここまでの実力を身に着けたため、軽く話した程度でもすぐさま情報を理解して会得する学習能力を持つ
王族の出だけあって、恵まれたボディラインと高い知性を兼ね備えており、それが故に他者に対しても自分と同じだけのスペックを要求するため、あまりリーダー適正は高くない
同じパーティーであるアルテには最初こそ無能だと見下していたが、自分には真似できない魔物に対してのけん制行動や、先んじて魔物に対処して動きを鈍らせてくれていることに気付いてからは評価を大きく見直しており、将来的には2人で王国で暮らしたいと願っている
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