第81話 メンテナンス
新入生の加入によってバイク部の活動は無事に継続出来るようになって、リナとフランは大会に向けて走り込みの頻度を増やして最終調整の段階に入っていた。
そうは言っても技量ばかり磨いても肝心なマシンが本調子でなければ意味がない。
東京都世田谷区用賀。
舞華の自転車屋「まいかさいくる」でリナとフランの愛車達の最終調整とメンテナンスが行われていた。
オイルを以前使っていた物から、さらにグレードが良い物に変えてオイル粘度も変更してレスポンス重視にした。
エンジン保護の観点で言えばあまり良くないのだが、レースだけの使い切りと割り切ればエンジンのメンテナンスを徹底している舞華ならどうってことないのだろう。
舞華はバリオスとZX25Rのメンテナンスを終えると缶コーヒーを飲みながら一服休憩をしようと店の外に出た時だった。
「あれ?…舞華?」
突然、男性の声に呼ばれたので舞華はそちらに振り向くと偶然にもリナの父で舞華の幼馴染でもある孝太だった。
「あれ?コウちゃん!?どうしてこんなところに?」と舞華は聞くと、どうやら実家に用があって帰ってきたらしく今晩は泊まって明日沼津に帰るらしい。
リナの父は婿養子で実家は舞華の家と近くで幼少期からの仲だ。
店内にある自分の娘(リナ)のバリオスを見た孝太が言った。
「あれってリナのバイクだよな?、アレか?大会前の最終調整的な感じか?」
「そうそう!今、終わったところ〜」
孝太はいつもバイクの整備をほぼ無償でやってくれている舞華に礼を言うと、舞華は「好きでやってることだから気にしないでよ」と若手達が成長を楽しんでいるみたいで、ほぼボランティアでリナやフランのバイクの整備を請け負っている。
舞華はせっかく孝太が実家に戻ってきているのであるお誘いをした。
「ねぇ?コウちゃん?夜にバイクの慣らし走行に首都高に上がるんだけど久々に一緒に走らない?」
孝太は「……お、おう!久々に走るか」と少し引きつった顔で間をあけながら返事をした。
これでも孝太は普通二輪免許を持っているのでバイクに乗ることができる。
以前にも説明したが、リナ達が生きる時代では免許区分の改正で普通二輪免許が250cc以下となっているが孝太が免許を取得したときは普通二輪免許で400ccまで乗れた時代の物なので、既得権で400cc以下まで乗車可能だ。
孝太は久々に舞華と走るのは楽しみよりもトラウマを思い出しそうな気がして落ち着かなかった。
その理由はこれからわかるだろう…
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