第79話 ○○通学ですけど…いいですか?
新入生の勧誘を始めてすぐに心珠の入部が決まり、バイク部の存続に必要な部員があと1人となった。
リナは授業中なのに授業そっちのけで昨日声をかけてきた新入生の窪塚結のことが気になっていた。
左手を顎に当てて肘をついて窓の外を眺めていると突然「西園寺!!」と強めの口調で世界史の先生に呼ばれてビックリしたリナは「あ、はい!」と言いながら席から立ち上がるとクラスメイト達が笑っていた。
「何をボーッとしてるんだ!今やってるところテストに出るからな?授業はちゃんと聞きなさい」
先生に怒られたリナは「す、すいません…」とだけ言って席についた。
とりあえず世界史の授業が終わったら昼休みになるので窪塚結の教室へ行ってみようと考えたリナは、今は授業に集中することにした。
授業が終わって昼休みになるとリナは弁当を片手に足早に教室を出ていこうとすると「リナ?どこにいくの?」とわざわざ弁当を持って教室を出ていこうとするのが気になった相撲部に所属するリナの小学校からの友人の三河一恵が声をかけると「ちょっと野暮用!」とだけ言ってリナは教室から出ていった。
リナが廊下を早歩きで1年生の教室に向かっている時だった。
「あれ、西園寺先輩?」
ちょうどリナが歩いてる横の廊下の階段を降りてきた女子生徒に声をかけられたので、リナはそちらに振り向くと偶然にも窪塚結だった。
「グットタイミング!ちょうど結ちゃんに会いに行こうと思ってたんだよ!…てか?なんで上の階から降りてきたの?お昼ごはんは?」
「……私、屋上でお弁当食べてるんです。ちょっとお箸を忘れてしまって教室に取りに戻ろうとしたら先輩が歩いてるのを見かけたので」
高校に入学したばかりの子が1人で屋上で弁当を食べるなんてクラスに馴染めてないのかと思ったが、リナはあえてそこには触れずに一緒に屋上で弁当を食べてもいいかと聞くと結は縦に首を頷いてOKしてくれた。
結は忘れた箸を取りに戻り再びリナと屋上に戻ると2人は向かい合わせで弁当を食べ始めた。
リナはオカズの唐揚げを食べながら結に「うちの部のこと考えてくれた?」と聞くと食べている手を止めて結が言った。
「…バイク部はなかなか珍しくて興味ありますけど…私が入部したらご迷惑かけると思いますよ?」
結が言う迷惑をかける意味がよくわからないリナは「迷惑…とは??」と聞き返すと結が続けてこう言った。
「私、東京から遠距離通学してるんです」
結の突然の言葉にリナはビックリして食べてるものを喉に詰まらせてしまい、慌ててお茶を飲んで落ちつくと「何故、東京から!?」と聞き返すと結は遠距離通学するに至った経緯を話してくれた。
結は小学生の頃から人と馴染むのが苦手で虐められていた訳ではないが友達がいなかったらしい。
中学生になっても結局周りと馴染めず、高校はいっそのこと誰も知り合いがいない遠くのところへ通おうと思って沼津の高校を選んだらしい。
片道100km以上もあっては部活をやるのも大変だろう。
だが、リナは結にこう言った。
「うちの部はバイクに乗って活動するからそれ以外は部室でミーティングすることがほとんどなんだ。結ちゃんが活動しやすいように私もサポートするつもりだから一緒にやってみない?」
意外な言葉が返ってきたことに驚いた結は、少し沈黙が続いたあとに言った。
「……こんな私ですけど、よろしくお願いします」
結の決心にリナはニッコリと笑うと「こちらこそよろしく」と言って握手の手を差し出して2人はお互いに握手を交わした。
これで久保田姉弟が抜けた分の部員が揃った。
リナが部長になってからの新生バイク部がいよいよ本格スタートした。
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