第36話 ツーリング計画

せっかくバイク部が活動できるようになったというのに、昨日は関係のない聖奈の激太りトークから体脂肪率に関することに発展してしまいろくな活動も出来なかったことを反省した聖奈はツーリングのことについて考えていた。

現状で部員は聖奈を含めた4人で、普通二輪免許を所持しているのはフランを除いた3人。

免許を取って1年未満のリナと健人は2人乗りが不可能だが、聖奈は取得して1年経過しているのでフランとタンデムしてツーリングすればいい。


「お疲れさまでーす!」


バイク部の部室に入ってきたのはリナだった。

フランと健人は見当たらないところを見ると、1人で来たみたいだ。


「よっ、リナちゃん!今日もおつかれ!…ねぇ?これ見てよ!」


聖奈がリナに見せたのは山梨県の観光ガイドだった。

山梨には富士山や富士五湖を始め、山梨を一望しながら入れる温泉で有名なほったらかし温泉や人気キャンプ場などバイクツーリングで行きたくなるスポットが沢山ある。


「ようやくバイク部らしいことしてますねぇ」


聞き慣れた女子の声がして、リナと聖奈は部室の扉の方を振り向くとフランと健人が部室にやってきた。

この様子だと廊下からリナと聖奈の会話を聞いていたっぽい。

リナから観光ガイドを受け取った健人がパラパラとページをめくりながらガイドを見ていると面白いものを見つけた。


「うぉっ!?なんだこのてんこ盛りのカツ丼は!?」


健人が見たのは山梨県甲斐市にある超大盛りを売りにしている定食屋で、全てのメニューがてんこ盛りと大食いが集まってきそうなお店だった。

健人がここに行きたいと言うと、真っ先に声を上げたのが姉の聖奈だった。


「ちょっと!私、ダイエット中なんだけど!?こんなの食べたらさらに太るじゃない!」


身体測定で10kg太った聖奈は、現在大食い系はNGだった。

しかし、リナもフランも割と乗り気でここに行きたいと言っており3対1で聖奈が負けて今週末の土日で山梨県までツーリングに行くことになった。


「ところで俺やリナは良いとして、フランはどうするんだ?免許もバイクもないし姉貴がケツに乗せていくのか?」


この中で唯一、免許とバイクがないのはフランだけで免許を取得して1年未満のリナや健人とタンデムができないので聖奈の後ろに乗るしかない。

しかし、ここで重大なことを思い出した聖奈が言った。


「てか、健人アンタさ?タイヤのヤマがもうなくてしばらく遠出無理とか言ってなかった?」


聖奈に言われて思いだした健人は顔に手を当ててアチャーと言いながら「そうだ!忘れてた…」と自分のバイクでツーリングに行けないことがわかってガッカリしている。

そうなると聖奈の後ろに健人が乗ることになる。


「じゃあ、中野さんは先生のバイクの後ろに乗りなさいな」


突然、東雲先生が現れてそう言うとリナ達は「いつの間に!?」とびっくりしていたが少し前に部室に入ってきて会話をこっそり(と言うわけでもないが…)聞いていた。

フランは成り行きでバイク部に入った為、そこまでバイクに興味がある訳でもなかったが伝説の元走り屋の東雲先生の走りには少し興味があった。


「先生とタンデムですか…伝説の電光石火と呼ばれた人の走りを特等席で味わえるなんてアタシは贅沢ですね」


フランがそう言うと「昔の話よ」と伝説と呼ばれるのがあまり好きではない東雲先生。


ツーリングは今週末の土日。

部活のみんなで行くツーリングの楽しさは格別だろう。




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