第9話 従姉妹の親友
「まさか、西園寺さんのお父さんと舞華さんが幼馴染だったなんて…世間って狭いですね…」
東雲先生は、二人からここまでの経緯を聞いたようで変な所で繋がりがあって下手に隠し事はできないと思った。
リナは、以前から東雲先生は何か隠してそうな気がすると勘づいていたようだが、ようやくその理由がわかった。
東雲先生は、やはりバイク乗りで結婚してからは最近は乗る頻度が減ったが以前はバイクに乗っていたようだ。
普通二輪免許を取得した際の教習指導員が相当な凄腕の教官らしく、免許取得後も会うとアドバイスや助言をしてもらい峠などで腕を磨いたらしい。
ワンチャン、東雲先生に教習所のことを聞いてみてもいいのでは?と思ったリナは思いきって聞いてみた。
「東雲先生、私どうしてもバイクに乗りたいんです!現状の免許制度では大変なのはわかってます!誰か指導員の知り合いとかいないですか?あっ!例えば先生を当時指導した方にお話を聞けないでしょうか」
リナが聞くと東雲先生は、腕を組んで黙って下を向いて考え始めた。
しばらく3人の間に沈黙が続いた…
東雲先生は、閉じていた目を開くとこう言った。
「私の従姉妹の姉の友人に指導員をしてる人がいるわ。でも、5年以上その指導員の方と会ってないから連絡が取れるか怪しいけど…ちょっと従姉妹に聞いてみるわ」
東雲先生はそう言うと、早速従姉妹に電話をかけた。
リナと舞華から少し離れたところで東雲先生は、電話で従姉妹と楽しげに話してるようだった。
「そういやー愛琉ちゃんと何年も会ってないなー、元気にしてるかねぇ」
舞華はコンビニの駐車場の輪留めに座りながら、自分の350SSのフロントタイヤの溝を指でなぞりながら言った。
舞華が言う愛琉というのは、東雲先生の従姉妹の名前で昔はツーリングもしたことある仲らしい。
現在は、親から引き継いだ極道の組長をしているようで裏社会側の人間になってしまった為、プライベートでなかなか会えないらしい。
しばらくすると、電話を終えた東雲先生がリナ達の方へ戻ってきてこう言った。
「無事、連絡がついたわよ!明日、偶然にも小田原に用事があってさっき話した指導員の方が来るみたいでついでに沼津まで来てもらえることになったよ」
これを聞いたリナは、明日学校をサボってでもその人から話を聞きたいと思った。
だが、目の前にいるのは自分の通っている学校の先生…そういう訳にもいかないのが痛いところ(笑)
「明日って普通に学校じゃないですか…」
リナがそう言うと「仕方ないわね…明日は早退して付き合うわ」と東雲先生は、リナの授業が終わるのに合わせて一緒にそのまま従姉妹の友人の指導員の方と会ってくれることになった。
「えぇ…仮にも教師が学校サボって生徒とそんなことしていいの?(笑)」
舞華の言う通り良い訳ないのだが、舞華に関しては中学の頃には既にバイクを転がしてるしよっぽどそちらの方が問題である。
リナ達は、学校のモラル的にはよろしくないと思うが別に違反行為をしてる訳ではない。
「舞華さんにだけは言われたくないですね」
東雲先生は、義理の叔母でもある舞華に嫌味っぽく言うと舞華は「あら、なんのことかしらぁ(笑)」と誤魔化すように笑っていた。
その2人のやり取りを見ていたリナは、なんだか羨ましかった。
東雲先生と舞華を見ているとわかる、昔は楽しそうにバイクで共に走っていたんだろうなぁと…
リナは、自分もあと10年程早く生まれていたら違っていたのだろうか…と思ってしまうこともある。
「あっ、そろそろアタシ行かないと!それじゃ、リナちゃんのことは後は任せたよー!東雲せんせー(笑)バイバイ、リナちゃん」
舞華は350SSのエンジンを始動すると、沼津市街の方へ颯爽と走っていった。
「あっ、ちょっ!」と東雲先生が言う頃には舞華の姿は既に見えなくなっていた。
東雲先生は、相変わらずの人だなぁと呆れていた。
「面白い人ですねぇ、舞華さんって(笑)昔からあんな感じなんですか?」
リナが舞華のことを聞くと「昔からめちゃくちゃよ!」と東雲先生はもうお手上げですと言った感じだった。
リナの自宅は、ここのコンビニから車で数分足らずの所だったが東雲先生はせっかくだからと家まで送ってくれた。
「それじゃ、西園寺さん。また明日学校でね!指導員さんと会う日程については、決まり次第学校で話すわ」
リナは「ありがとうございました」と礼を言うと、東雲先生は帰っていった。
本当に充実した土日休みだったし、いい収穫はあった。
明日は月曜日だが、こんなに明日が待ち遠しいと日曜でこんな気持ちになったのは初めてだった。
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