蜜のごとく甘く


 若鶏のディアボラ風が食べたい!

 と叫んでサイゼリヤに来ました。


 美味しいですよね、あれ。

 パリッと焼き上がった鶏の皮に、香りの良い刻みタマネギがシャクッ、シャクッと歯に楽しい。

 ときどき無性に食べたくなってしまいます。


 そんなわけで、今日のランチは

 若鶏のディアボラ風

 スパゲティ・ミートソースボロニア風

 小エビのサラダ

 そしてデザートにティラミス

 でした!



   *



 話は変わりますが、サイゼリヤに来る途中、植え込みのツツジが実に見事に咲いておりました。

 澄んだ鮮やかな赤紫、和名はそのまま“躑躅つつじ色”の大輪が、植え込みいっぱいに元気よく花開いて陽光を浴びているさまには、自然、頬がほころんできます。


 が、僕は、ツツジにはひとつ苦い思い出があるのです……



   *



 僕が小学生の頃。

 家の近くに、町内でツツジの名所として知られた公園がありました。


 公園内の小山の斜面に、視界を埋めるほどのツツジの木が植えられている。

 中腹あたりには小さな東屋あずまやも建てられており、花の季節には、のんびりと腰掛けて、咲き乱れるツツジを一望できる……という仕掛けです。


 そこに祖母と遊びに行ったとき、祖母から花の蜜の吸い方を教わりました。


 ツツジの花を摘み、を剥ぎ取る。

 むき出しになった雄しべ雌しべの付け根あたりに口をつけて、ちゅーっと吸えば、かすかな甘みが口の中に流れ込んでくるのです。


 僕は夢中になりました。


 花の蜜が、そんなに美味しかったわけではありません。

 もっと甘くて味の濃いお菓子なら、周りにいくらでも溢れておりました。


 でも、「花の蜜を吸う」というメルヘンチックな行為それ自体、花の奥に確かに甘い蜜が秘められているという不思議そのものに、僕はすっかり魅了されてしまったのでした。


 それ以来、僕はたびたび公園に来て、一輪、また一輪とツツジの蜜を吸いました。


 そしてあるとき……とうとうたがが外れ、僕はやってしまいました。

 公園中のツツジの花を、数時間もかけて残らずみんな摘み取ってしまったのです!



   *



 我に返ったのは、公園の地面が蜜を吸われた花でいっぱいになった後のこと。

「あっ……やりすぎたかな」

 僕の背筋に走る寒気。


「バレるかな……」

 バレました。

「怒られるかな……」

 死ぬほど怒られました。


 というのが、ツツジにまつわる苦い思い出。

 みなさん!! 花は大切に!!!!!

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