6.目に見えない真実-2
ベルナの
外との温度差は明らかに二十か三十度以上もあり、全身の筋肉は急激に収縮し、関節の節々は度を越えた激烈な温度変化に痛みを感じ始めた。
ガタガタと歯を震わせながらグレゴリアの方を覗くと、天人の方はまるでこの気温を気に留めている様子はなく、至って平静である。
視界が悪い。と言うか、
「きゅ、急に、夜に……なりました?」
「いいえ。
「え?」
グレゴリアの言葉に呼応するように、もぞもぞと目の前の大地が揺れ、白骨化した指が天に突き出され、続々と人間の骨格のようなクリーチャーが這い出る。
「な、なに?!」
「
「言ってる場合ですかっ?!向かって来てますよ!湖じゃなかったの?敵ってお魚さんとかじゃないの?!」
「ええ。何かしらの原因で自死した一対の男女が、その骨を埋めた湖……という事らしいですよ。基本的にアンデッドが出ます」
「先!に!言って!ください!」
地面から完全に体を出した途端、カクつきながらスケルトン共は脇目もふらず、真っすぐベルナの方へと歩き出した。
「何で?!何で私?!」
「
「冒険者の方の常識を!私が!持ってる訳!ないじゃないですか!言ってないで助けて!」
前方にいる、犬の骨格が走り出す。物凄いスピードである。おまけに吠えている。肉が完全にないのに、大音量が出ている。ベルナは自分の膀胱が今日二度目の致命的な打撃を受けた感触がした。
「ですから、私がやったらベルナ嬢に経験値が入らないのです。ビナーの説明も完全に聞いていませんでしたよね?先ほど、その見事な肉体に惚れ込んだ
言い方!逞しくて頼りになりそうって思っただけ!
「
「んご?」「んごご?」「んごごご?」
先ほどまで静かに立っていただけの三体の
「もっと具体的な指示を出さないといけませんよ。あくまでも
「た、戦って!パンチ!パンチッ!」
完全に傍観を決め込んでいるグレゴリアに怒りをぶつける暇もなく、ベルナは大慌てで脳裏に浮かんだ言葉をそのまま叫ぶ。
すると、右二体の
どうやらスケルトン共は
きょとんとするベルナの前に立つと、非常に緩慢な動きでそれは身にまとっている唯一の衣類である黒のポージングパンツに指をかけ、ゆっくりとそれを降ろそうとする。
「ちょ、パンツじゃなくて、パンチって言った!脱ぐな!着ろ!」
「んご……」
心なしか、
「グレゴリアさん?これどういう事?ねぇ?」
「あぁ……音声認識ってのは、ちゃんと発音しないと、誤認識される場合ってあるらしいですね」
「誤認識?!欠陥兵器じゃないですか!」
「あらひどい」
「あ……」
目の前の
さっきあくまでも
「……正しく発音すればいいでしょ」
「ええ。冷静な指揮が求められます。頑張ってくださいね」
「……グッ……」
脳に血が昇るのを感じながら、ベルナは歯を食いしばる。いいんだ。怖いのより、むしろ腹立つのがまだマシだ。今はそう考えよう。
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