第9話 最期の気持ち

エルは、私との別れを受け入れられず、心に深い傷を負ってしまう。その結果、彼は芸能活動の休止を決断する。彼は自分の気持ちに向き合い、私を追い求める決意を固めた。


休止期間中、エルは私の行方を捜し求め、都市から都市へと足を運ぶ。彼はSNSや友人たちとの連絡を通じて、私がどこにいるか、どうしているかを探っていた。しかし、私はどこにも姿を現さず、エルは私に会えずにいた。


ある晴れた日、エルは私の故郷へ足を運んだ。私が子供のころ過ごした家を訪ね、近所の人たちに話を聞いて回る。そんなエルの姿を見て、近所の人たちは驚きと共感を抱いた。彼らはエルに温かい言葉をかけ、私のことを語った。


エルは私との思い出を胸に、追い求める旅を続ける。彼は心の奥底で、いつか私と再会し、私が再び愛を感じられる日を待ち望んでいた。その願いは、彼が歩む道を照らす光となり、彼を前進させ続ける原動力となっていた。


エルが故郷に訪れた日、彼が出会ったのは美咲だった。彼女は余命が少ないことを知り、心残りがないように自分が行きたい場所を巡っていた。そして、自分の恋のライバルであり親友である私ともう一度会いたいと思い、この場所に訪れていた。


エルは美咲が癌だということをそこで初めて知る。そして美咲が、今までずっと自分のことを支え、励ましていたことを思い出す。そして美咲がずっと自分を愛していたことに気づく。


「美咲、君がこんなに苦しんでいたなんて…。僕は何も知らなくてごめんね。」エルは言った。


美咲は弱々しく微笑んで、「大丈夫だよ、蒼。これは僕の運命だから。でも、最後に蒼にお願いがあるんだ。百合子を愛してほしい。わたしにはもう時間がないから…。」と言った。


エルは美咲の願いに戸惑いつつも、彼女に対する感謝の気持ちから、「美咲、僕と一緒になろう。僕が君を幸せにする。」と提案する。


しかし、美咲はエルの言葉を静かに断る。「ありがとう、蒼。でも、わたしは百合子を幸せにしてほしいの。エルが彼女を愛してくれることが、わたしにとっての幸せだから。」と言い、彼女はエルに心からの祝福を送った。


エルは美咲の願いを受け入れ、彼女に約束する。「分かった、美咲。君の願い、必ず叶えるよ。百合子を幸せにする。だから、君も安心してね。」と言って、美咲に微笑んだ。


美咲は涙を流しながら、エルに感謝の言葉を伝えた。彼女は最後の力を振り絞って笑顔を見せた。その笑顔は、エルの心に深く刻まれ、彼の今後の人生に大きな影響を与えることになる。


美咲はエルに最後の笑顔を見せたあと、倒れる。彼女の病気が進行していた。エルは慌てて救急車を呼び、すぐに病院に運んだ。病院のベッドで美咲はエルにお願いをする。「蒼、ラブコインアプリを使って、私のラブコインを百合子のラブコインアプリの残高として送信してほしいの」というものだった。


エルは驚いた。「でも、それは君のラブコインだよ。それを本当に使っていいのか?」


美咲は微笑んだ。「うん、大丈夫だから。私の気持ちは伝わったから。」


ラブコインは、コイン自体を残高として相手のアプリのウォレットに送ると、ラブコイン残高を増やすことができるという性質があった。美咲はスマホをエルに渡した。美咲のスマホにはラブコインが150あった。それをすべて百合子のウオレットに送信した。


美咲は自分の愛が全てなくなったことを感じた。目から一筋の涙が流れたが、「これで良かった」とそっと微笑んでいった。そのあと息を引き取る。


エルは美咲の手を握りしめ、涙を流しながら彼女に誓った。「美咲、ありがとう。僕は百合子を幸せにすると約束するよ。だから、君も安心してね。」

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