第3話 誤送信

私は美咲に接触することを決意し、彼女にメッセージを送ることにした。「美咲さん、はじめまして。エルくんの大ファンで、あなたとエルくんの幼馴染だと知って、ぜひお話ししたいと思いました。もしよろしければ、お会いしてお話しできると嬉しいです。」という内容のメッセージを送った。


数日後、私は美咲から返信が届いた。「こんにちは、お返事遅くなってごめんなさい。私もエルくんのことを応援してくれる人とお話ししたいと思っていたので、ぜひ会いましょう。」という嬉しい返事だった。


私は美咲との約束の日を楽しみにしながら、アルバイトを続けた。そして、ついにその日がやってきた。美咲と会うことができる喫茶店で、ドキドキしながら彼女を待っていた。


美咲は笑顔で私に近づいてきて、「あなたがエルくんの大ファンの方ですね?」と尋ねた。私は緊張しながらも、「はい、そうです。エルくんについてたくさん話を聞きたいんです」と答えた。美咲は優しく微笑んで、「それじゃあ、エルくんのことを色々教えてあげるね」と言ってくれた。


私は、まずエルに関するとりとめのない質問をしていった。彼はいつから芸能活動をしているのか。彼が得意とする演技はどのよなものなのか。アルバイトで必要そうな質問をしてゆく。そしてついに聞いてみた。

「あのー。エルの本名って知ってたりしますか?」

「え、どうして?」

「それが、誰もエルの本名を知らないんです。これだったら仕事に差し支えがあるんじゃないかって思って……」

「でも、スタッフみんな知らないんだから、あなたが取り立てて知らなくてもいいんじゃない?」

「そうなんですけど……やっぱり推しの本名は知っていたいんです!」

「そうなのね……押しは推しの名前で読んであげるのが一番だと思うけど……」


美咲は少しほほ笑みを浮かべた。そして窓の方を向いた。その後そっと行った。

「エルの本名は翔太(しょうた)だよ。大塚翔太」。


私は、その言葉を大切に心に刻んだ。


その夜、私はアプリを使って、エルの顔を思い浮かべながら、翔太という名前をアプリに記入し、ラブコインをどれくらい支払おうか迷いつつ、最終的に30コインを支払うことにした。


しかし、次の日も、エルに対する何の変化も感じられなかった。恋愛感情の残高だけが残酷に減っていた。私は混乱し、どうして上手くいかなかったのか理解できなかった。


その夜、ラブコインの利用通知メールが届いた。


ラブコインご利用のお知らせ

利用日 2023年4月23日

利用先 大塚翔太

利用額 30ラブコイン

ポイント残高 69ラブコイン


そのメールの下の部分に注意書きがあった。

※ ご利用時に名前の記入に誤りがあり、ラブコインを誤送信した場合、効力を示さないまま、ラブコインの残高だけがなくなります。名前のご記入に間違いがないか注意をお願いいたします。


私はゾッとした。そして一つの可能性が浮かんだ。エルの本名は「大塚翔太」ではなかったのか?

でも、美咲に言われたとおり、感じをメモに書いていてそのとおりに打ち込んだはずである。なんで?


そんなある日、私は美咲がエルと一緒にいるところを見た。その時の美咲の目は明らかにただの同業者の目ではなかった。

岬は確かに、エルのことが好きだったのだ。


もしかしてと思った。そしてわたしは確信した。


美咲は、私に嘘の名前を教えていたのだ。


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