第72話 花火 中編

奈恵のおすすめで行ったオムライス屋さん。

サイズが原寸大でメニューに描かれていたので、それを見ながら悩んでいたわけだが、

「SSでもこれくらいあるの!!」

両手を使って一所懸命説明する奈恵。

可愛いけどさ。

「「知っとるわ!!」」


「伝票を見たということは奢ってくれるということかい?」

「は?」

「きゃーイケメーン」

「奈恵は古い考えの人間なんだね」


「スタイリッシュに払いたい」

レジでごちゃごちゃしたくない。

それぞれがオムライス代を机に出した所で青が言った。

まとめられるだけ小銭をまとめ、3人で行くのは無駄だとなり、じゃんけん。

勝負は一発で決まった。

「ふっ、頭いい人はチョキを出すんだよ」

「…性格悪いじゃなかったか?」

「雪と同じにしないでよ」

策士策に溺れるとはこのことよ、はっはっは(ただ運がないだけ)。

…。

スタイリッシュに払う背中を見ながら思った。

奢らせたみたいやん。


「ピーでピーだったね」

映画を観に来た私たち3人。

「主題歌良かった」

奈恵にはエンドロールだけ観せときゃいいんじゃなかろうか。

「2周目でもよく分からん」

2周目でも快く観に行くお前がよく分からん。


バスで私と奈恵が先に降りた。

あー手振るんかなこういう時って。

振ろ。

ぎこちなく振った先に、結構な勢いで手を振る青の姿があった。奈恵は隣でびっくりして、慌てて手を振ってた。

私たちらしくて笑っちゃったよ。


それが昨日。

暁はずっと勉強してたのかな。



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