第15話 お宝
「ふう、なんとか間に合った……」
僕は崩れていくダンジョンを見ながら、そう呟く。
大きく空いていた穴は、もう完全に塞がってしまっている。中に取り残されていたらと思うとぞっとするね。
「ったく。何度もダンジョンに入ってるが今日みたいなイレギュラーだらけの探索は初めてだ」
「え。そうなんですか?」
マーカスさんの言葉に驚き、僕は尋ねる。
「当たり前だ。まさか最奥部の宝箱に罠が仕掛けられているなんて思わなかったぜ。普通あそこについたら安全なんだが、あのリッチのせいでとんでもない目に遭ったぜ」
「そうだったんですね……」
マーカスさんは道中の宝箱は警戒していた。
だけど最奥部のあの宝箱に関してはあまり警戒していなかった。きっとその認識は他の冒険者の人も同じなんだろう、リッチはその隙をついたんだ。
「とはいえ罠を発動してしまったのは俺の落ち度だ、本当に悪かったウィル。そして……ありがとう、俺たちを助けてくれて。お前ほど勇敢で強い男を俺は他に知らねえ」
そう言ってマーカスさんは僕に深く頭を下げる。
こんな風に持ち上げられると照れちゃうね。少しは自信を持っていい……のかな?
「あ、そうだ! 宝箱の中身を見てみませんか!?」
照れくさくなった僕は、その気持ちをごまかすようにそう提案する。
マーカスさんはダンジョン最奥部にあった宝箱をちゃんと持ってきてくれていた。中にいいものが入ってるといいけど。
「ああ、そうだな。つってもあのリッチが何かいい物を残してくれてるとは考えにくいけどな……っておわあ!?」
宝箱を開けて中を確認したマーカスさんはひっくり返る。
一体どうしたんだろうと僕とカレンさんも中を除く。するとそこには大量の金貨や宝石などのお宝がぎっしりと詰まっていた。
「なんだこれは!? こんなお宝見たことないぞ!」
「す、すごい……」
僕とカレンさんも驚く。
まさかこんなに溜め込んでいたなんて……。
「あのリッチはかなりの人間を手にかけていたっぽいからな。その時に奪っていたんだろう。それにしても凄い量だ……」
マーカスさんは嬉しそうに金貨を手に取る。
まさかこんなにたくさんに手に入るなんて僕も思わなかった。嬉しい誤算だ。
「じゃあまずはウィル殿、好きなだけ取って下さい。私たちは手間賃をいただければ構いませんので」
「え?」
カレンさんの言葉に僕は驚く。
「ウィル殿の働きがなければ、私たちは命を落としていたでしょう。せめてものお礼です。私たちは別途ダンジョンの依頼料もいただけますので。貴様もそれでいいなマーカス」
「ぐうう……ああ、問題ねえ……」
めちゃくちゃ後ろ髪を引かれながらもマーカスさんは宝箱を僕の方に出す。
うーん、二人の気持ちは嬉しいけど、流石にそこまでしてもうわけにはいかない。
「こんなに貰うわけにはいきませんよ。確かに最後は僕がいいところを持ってっちゃいましたが、道中は二人の活躍の方が大きかったじゃないですか。そもそもこのダンジョンに来る事が出来たのも二人のおかげですし、ここは仲良く三等分にしましょう!」
僕はそう言ってお宝を均等に山分けする。
カレンさんは「それは申し訳ない!」と食い下がってきたけど、こんなに貰っても困ると言ってなんとか押し付けることに成功した。
みんな頑張ったのに僕だけこんなに貰うわけにはいかないからね。これでいいはずだ。
「うう、助けていただいた上に、慈悲をかけていただけるとは申し訳ないっ……! このご恩どのように返せば……そうだ!」
カレンさんは何かを思いついたように手をたたくと、急に身に着けていた服を脱ぎ始める。
「かくなる上は体でお返しいたします! どうぞ好きに使って下さい!」
「わ!? なにやってるんですか!?」
「ちょ、お前子どもに何してんだよ!!」
混乱したように目をぐるぐる回したまま脱ぎだすカレンさんを、僕とマーカスさんは止める。
今日は色々あって大変だったけど、楽しかった。
引きこもるのもいいけど、たまには外に出るのもいいかもね。
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