第10話 闇の牢獄
「うーん、ここはどこだろう」
突然暗い空間に飛ばされた僕は、頭を捻っていた。
明らかにこの場所は普通じゃない。ただ暗いんじゃなくて、場所自体が特殊な空間のように感じる。
上下左右の感覚がなくて、いくら進んでも壁に当たる気配もない。
試しに魔法を使ってみると、はるか遠くまで飛んでいって見えなくなってしまった。これじゃ普通に出るのは無理そうだね。
「次元魔法の一種と見てよさそうだね。それにしても僕の知らない魔法はまだまだあるんだなあ」
真っ暗な空間に閉じ込められたというのに、僕はわくわくしていた。
いったいこれはどんな術式で構築された魔法なんだろう? どう思いつき、どのように運用されているのか。属性は用いているのか、魔道具による補助は受けているのか。気になって仕方ない。
「……と、楽しむのもいいけど早く脱出しないとね」
僕のいる空間にカレンさんとマーカスさんは来ていない。
ここと同じ様な空間を複数作れるとは考えにくいから、まだ二人は遺跡の中にいる可能性が高い。
もしかしたら危険な目に遭っているかもしれない。僕が行って助けになれるかは分からないけど、いつまでもここで捕まっているわけにはいかない。
早く抜け出さないと。
「
僕は今いる
すると頭の中に膨大な情報が流れ込んでくる。うわ、この空間魔法かなり複雑だ。
「……これを作った人は人間じゃなさそうだね」
魔法の術式にはその魔法使いの癖が出る。
この術式はあまり人間っぽくない。どちらかというと魔族に近いかな? 魔族の術式は複雑で難解な式になりがちなんだ。逆に人間が作るやつは機能性重視の簡素な式が多い。
これはどっちがいいかじゃなくて、一長一短なんだ。
扱いづらい魔族の術式も、様々な魔法効果を同時に発動できるという利点がある。どちらのいい所も認めて吸収する。それが僕のスタイルだ。
「ふむふむ、なるほど」
中々難しい術式だったけど……だいたい理解できた。
次元魔法に詳しくて良かった。もし次元魔法のことを知らなかったらもう少し時間がかかっていただろうね。
「それにしても面白いアプローチの仕方だね。少し無駄が多いけど、それが面白い副次効果を生んでいる。うん、いい魔法だ」
こんなことを言うのは呑気かもしれないけど、僕は賛辞せずにはいられない。
魔法に善も悪もない。全ては使用者次第だ。だから僕はどんな残忍な魔法でもそれを知りたいと思ってしまう。この留まる所を知らない知識欲は魔法使いならみんな持っていると思う。
「よし、じゃあこの式を逆算して脱出方法を探そっかな」
僕はそう言って再び思考の海に潜っていくのだった。
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