第2話 再会
色々な仕事であふれている帝都には、当然それを斡旋する場所もある。
商業ギルド地区には、職を斡旋してくれる建物がたくさんあるんだ。
「ひとまずそこに行ってみて、もし見つからなかったら魔術師ギルドに行ってみたらいいかな?」
なぜかは分からないけど、魔術師ギルド帝都支部長のグレゴリーさんは僕に優しい。
きっと力になってくれると思う。
一応魔法の知識はそこそこある自信があるから、聞きたいと思ってくれる人はいるはずだ。
受け持ってる生徒の人たちに聞いてもいいしね。エマに知られたら凄いことになりそうだからあまりその方法は取りたくないけど……。
「……っと、ここが商業ギルド地区かあ」
そこにはたくさんの人がごった返していた。
ここには普通の市民や旅人は滅多に来ない。何かしらのギルドに属している人が来る場所だ。商人が多いからか通る馬車の量も多いね。
魔術師ギルドもギルドではあるけど、商業ギルドのくくりには入らないみたいで、この地区にはない。だから僕もここには来たことがないんだ。
「えーと……それっぽいお店は……」
きょろきょろしながら通りを歩く。
職を斡旋してくれる建物はいくつかあった。でも商人系や建築系などが多くて、魔法使い系の仕事を斡旋してくれる所は中々見つからなかった。
もう少し奥に行ってみようかな。そう思った瞬間、大きな声が後ろから聞こえてくる。
「あ、あなたはウィル殿ではありませんかっ!」
「へ?」
声に振り向いて見ると、紫色の長い髪をした綺麗な女の人が僕の方に駆けてきていた。
物凄い速さだ。僕は思わず転移して逃げようとするけど、それよりも早く女の人は僕に接近しがばっと抱きついてくる。
「まさかまたお会いできるとは! こんなに嬉しい日はありません!」
「ちょ、もが」
思い切り胸の中に顔を埋められて、僕はもがく。
このままでは窒息する……そう思った瞬間、僕は解放される。
「おっとすみません、つい嬉しくて……」
申し訳無さそうに女性は謝る。
その顔を見た僕は、昔のことを思い出す。
「貴女は……カレンさん?」
「覚えていてくださるとは嬉しいです! お久しぶりですね!」
カレンさんは嬉しそうに笑みを見せる。
彼女は二年前、森の中で出会った冒険者のお姉さんだ。
凄腕の剣士で、魔族相手に剣一本で渡り合っていた。
あの時はなぜか僕が冒険者にスカウトされて、逃げ出しちゃったんだっけ。あれからずっと引きこもってたから、会うのはもちろんそれ以来だ。
「お久しぶりです。あの時は逃げてしまってすみません……」
「いえ、あの時は私が強引だったのがいけないんです。ウィル殿は悪くありません」
カレンさんは申し訳無さそうにそう言う。
よかった。気まずい感じにはならなそうだ。
「そうです。ここで会ったのも何かの縁。お時間があれば少しお茶でもどうでしょうか? もちろんお金は私が出させていただきます」
「ええと、じゃあ……はい。ぜひお願いします」
別にそれほど急いでいるわけじゃないから、その申し出を僕は受け入れてた。前に勝手にいなくなっちゃったこともあるしね。
それに冒険者の話を聞けるのも楽しみだ。僕は引きこもりだけど、外のお話を聞くのは好きなんだ。
「それでは行きましょうか。いいお店があるので案内いたします!」
そう言ってカレンさんは僕に腕を組んでくる。
なんて無駄のない動き……回避する暇もなかった。
「あ、あの。ちょっとこれ距離が近すぎるんじゃ……」
「まあまあ、よいではありませんか!」
上機嫌なカレンさんは、腕を組んだままずいずいと進んでいく。
うう、周りの人達の視線が恥ずかしい……。
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