第4話 出発
「さて、じゃあ出るとするか」
エマが来た日の翌日の朝。
俺たちは軽く荷物をまとめて馬車に乗り込んだ。
家には魔法で結界を張ったから誰かが侵入したりはしないと思う。
「それではお二人とも中へ。エマさんはくれぐれも粗相のないように」
「はい……」
エマに釘を刺したルナは御者台に乗る。
多才なルナは馬の扱いも上手いんだ。
「さて、それでは出発します。お二人共しっかり捕まっててください」
僕とエマが乗ったのを確認したルナは、馬車を走らせる。
道は舗装されてないからでこぼこしてるけど、この馬車は色々と改良してあるから揺れは少ない。エマもそのことに気がついたのか、馬車を興味深そうに眺めている。
「軽量化に安定化、速度上昇に防御魔法まで……この馬車ならドラゴンに襲われても大丈夫そうです」
「はは、それは言い過ぎだよ」
盗賊くらいなら問題ないと思うけど、流石にこの馬車でドラゴンから逃げられるとは思わない。
ただそういうのを目指すのも楽しいかもしれないね。移動する家とか作れたらどんな場所でも引きこもれるし。今度開発してみようかな。
などと考えながら馬車でゆっくりしていると、唐突に馬車が止まる。
まだ休憩するには早い時間だ。いったいどうしたんだろうと窓から顔を出して前方を見る。すると、
「橋が壊れてる……!」
川にかかっていた木製の橋が、無惨にも壊れてしまっていた。馬車が通ってもビクともしない頑丈な橋のはずなのに跡形もなくボロボロだ。いったい何があったんだろう。
「数日前通った時はなんともありませんでした。魔獣の仕業でしょうか?」
エマの推測は多分当たっている。
最近増水したっていう話もないし、きっと魔獣が原因だ。
「どういたしましょうかウィル様。迂回すれば道はありますが、到着まで時間がかかってしまいます」
「……そうだね。じゃあ僕がなんとかするよ。この橋がこのままじゃ困る人も多いだろうしね」
この道を使う人はそこそこいるはずだ。
普通に直すのを待っていたら数ヶ月はかかっちゃうと思う。ここは魔法が使える僕がなんとかした方がいいだろう。
僕は壊れた橋に近づいて、その残骸を触る。
……うん、普通の木材だ、これなら再現するのも難しくはないね。元々橋がどんな形だったかも覚えている。これなら直せそうだ。
「
集中して、魔法を発動する。
すると壊れた橋が見る見る内に修復されていく。時間にして十秒足らずで橋は元通りになる。
「また壊れても怖いし、少し強くしておこっか」
追加で魔力を流して、木材の分子構造に手を加える。
よし、これならもう簡単に壊れることはなさそうだね。
「ありがとうございますウィル様。お手を煩わせてしまい申し訳ございません」
「いいよこれくらい。さ、行こうか」
馬車に乗り込もうとする僕。
すると今まで眺めていたエマが、神妙な顔で僕が直した橋を触っていた。
「どうしたのエマ?」
「あ、いえ! なんでもありません、今行きます!」
話しかけるとエマは普段の調子に戻る。いったいどうしたんだろう?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます