第25話【黒髪と赤毛の美少年たち】
突如現れた黒髪の美少年。彼はどうやら愛美たちの見方のようだ。
その証拠に黒髪の美少年はゴブリンたちを打ち倒していく。
しかも武器を使わぬ無手での打撃で倒していくのだ。
「シュ!」
疾風の速さで繰り出されたハイキック。
その一蹴りが自分の身長よりも高いホブゴブリンの頭を蹴り飛ばした。
黒髪の美少年に左頬を蹴られたホブゴブリンの巨漢が風車のように回転すると頭から地面に叩き付けられる。
凄い蹴り技の威力だ。
ホブゴブリンは一撃で絶命。地面に倒れ込むとピクリとも動かない。
「シュシュ!」
続いては二撃連打の左ジャブ。
その二撃に二匹のゴブリンが仰け反った。
二匹のゴブリンは鼻を拳で撃たれたのだ。
その鼻が拳型に陥没して鼻血を散らしていた。
そのままバタリと倒れ込む。
「シュ!」
今度はローキックだった。
ローキックでゴブリンの片足を蹴り飛ばすとパチンっと鞭で叩いたような渇いた音が響く。
次の瞬間、立ち尽くすゴブリンの片足が膝から変な方向に曲がっていた。
ワンテンポ遅れて悲鳴を上げたゴブリンが横に倒れ込む。
「シュ、シュ、シュ!」
続いて連続に繰り出される爪先蹴りがゴブリンたちの顎先を次々に蹴り上げる。
すると、顎先を下から蹴られたゴブリンたちが宙を舞うと白目を向いてバタバタと倒れていく。
どれもこれも一撃だった。
黒髪の美少年は、拳脚の一撃でゴブリンたちをノックダウンしていくのだ。
それは可憐で鮮やか。なのに殺傷力満点。
技が速すぎて美しさすら理解する暇を与えてくれない。
それはもう戦いと呼べるような光景ではなかった。
一方的な無双。
黒髪の美少年が魅せるワンマンショーである。
まさに蹂躙状態だ。
センシローは唖然としていた。
ゴブリンと背丈は同じぐらいの少年が、複数のゴブリンを次々に打ち倒していく。
しかも素手の一撃で余裕の攻撃を繰り出し一方的にだ。
巨漢のホブゴブリンですら子供扱いである。
あのような華奢と思える小柄な体に、それだけの破壊力が込められるのかと不思議に思う。
「な、なんだ、あの子供は……」
驚愕するセンシローを余所に黒髪の美少年はゴブリンたちを続々と駆除していく。
その光景を見て尋常でいられないのはゴブリンキングのゴクアクスキーであった。
自分の尻穴を犠牲に手に入れたゴブリン大軍団が、突如現れた謎の子供に次々と倒されていく。
信じられなかった。
だが、このような一方的な無双を許してもいられない。
ゴクアクスキーは強く念じて深紅の水晶体からゴブリンたちを出し放つ。
そのゴブリンたちが津波と成って黒髪の美少年に押し迫る。
人海戦術だ。
「お、これは大漁だな。ここは一つギアを上げるか」
迫り来るゴブリンの津波に黒髪の少年が股を開いて深く腰を落とした。
空手道、体馬の構えだ。
そこから迫り来るゴブリンたちに左右の拳を交互に連続で繰り出した。
「せい、せい、せい、せい、せい!」
連続正拳突き。
その連打は無限に続き、速すぎるあまりに正拳の壁を作っていた。
まさに弾幕である。
その正拳の弾幕に激突して撃沈していくゴブリンたち。
ゴブリンたちは止まらず正拳の弾幕に飛び込んでは打ち払われていった。
否、彼らも自分から正拳の弾幕に飛び込みたくって飛び込んでいるのではない。
津波のように進む後ろの仲間に押されて正拳突きに飛び込んでしまっているのだ。
だが、それでも黒髪の美少年まで届くゴブリンは一匹も居なかった。
すべてが正拳の弾幕に打ち落とされている。
黒髪の美少年の周りにどんどんと死体の山を築くだけであった。
「ん~、きりがないな……。なあ、エン。面倒臭いから全部燃やしてくれないか?」
すると黒髪の美少年の背後から赤毛の美少年が可愛い顔を出した。
いつの間にかとセンシローは目を剥いて驚いている。
「いいの僕が全部燃やしちゃってさ?」
「構わねえ。だってこいつら詰まらないんだもの」
「じゃあ、全部燃やしちゃうよ」
すると赤毛の美少年が両手を前に出した。その両掌から炎を放つ。
その火力は火炎放射器級。
怒濤の火柱が扇型に広がり左右からゴブリンたちを焼き払っていく。
荒々しい火炎がゴブリンたちの津波を押しきりゴブリンキングの目の前まで届いていた。
「熱い、あちち!!」
ゴブリンたちを盾にして火炎の熱風から逃げるゴブリンキング。
王は無事だったが多くの家臣たちが生きたまま焼かれていた。
「汚物は消毒だよ~」
「ギィエェエエエ!!」
全身を焼かれるゴブリンたちが断末魔のような悲鳴を上げていた。
やがてバタバタと倒れていく黒焦げの消し炭たち。
赤毛の美少年が放つ火炎の攻撃で、ゴブリンたちは七割以上が焼き殺されていた。
圧倒的な火力の差である。
これが戦争ならば、敗北並みの損害だろう。
もう既に決着は付いている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます