第20話【気狂い】

あ、熱い……。


どれぐらい時間が過ぎたのだろうか?


どれだけの距離を歩いたのだろうか?


クソ、分からない。


頭が混乱していて状況が分からない。


ここは何処だろう。


私は何処に向かって歩いているのだろうか?


畜生、分からない……。


熱い、喉が渇いた。


熱い熱い熱い熱い!


苛つく苛つく苛つく!


なんでこんなに日差しが熱いんだろうか……。


服が煩わしい。


脱いでしまおうか……。


ああ、脱ぐのすら煩わしいぞ。


ええい、破いてしまえ。


どうせ服なんぞいずれ着なくなるのだから。


着なくなる?


何故に?


知るか!


そんなこと知るか!!


はぁはぁ、それにしても喉が渇くぞ。


飲みたい……。


水、いや、酒か?


いや、酒よりもっと美味しい物が飲みたい。


なんだろう?


酒より美味しい飲み物とは?


血……。


生き血か、生き血が飲みたい。


新鮮な生き血が飲みたいぞ。


出来れば人間の血だ。


ベロベロと舐め回したい。


この喉の渇きを潤してくれるのは人間の生き血だろう。


そうだ、奴の血が飲みたい。


モブノ・ヨーナ・モブギャラコフ。


ムカつく野郎だ。


あいつの生き血で喉を潤したい。


あいつの首筋を噛みちぎって、ガブガブと生き血を飲んでやりたいぞ。


血の一滴も残さずにベロベロと舐めてやりたい。


その後は食らうんだ。


あいつの肉も骨も全部食らってやる。


あいつの家族も殺して食らってやる。


妻も子も、飼っているペットまで殺して食ってやる。


隣の家の住人も、友達と呼べる連中も食らってやるぞ。


そうだ、襲おう。


あいつを襲ってやろう。


あいつの家を襲ってやろう。


あいつの村を襲ってやろう。


生きてる人間はすべて食らってやる。


ただ殺して食らうだけでは気が済まん。


一本一本順々に指をへし折った後に手足を引きちぎってから内蔵を生きたまま引きずり出して、本人が見ている眼前で己の肉を食らってやるぞ。


それには先ず力が必要だ。


パワーだパワーだパワーだ!!


この深紅の水晶体が教えてくれている。


力の在処を───。


そうだ、私は向かっていたのだ。


力の在処に……。


この深紅の水晶体が示す場所に向かっていたのだ。


もうすぐ着く。


ここだ、ここに力がある。


魔の森の隅っこ。


ゴブリンの集落。


居るぞ居るぞ居るぞ。


邪悪な小鬼たちが巣くってやがる。


ゴブリンたちが集落を築いて暮らしてやがる。


私の姿を見るなり膝を付いて頭を下げてきたぞ。


この私に降伏してやがる。


崇めてやがるぞ。


従順な奴らめ。


そうだ、こいつらを使ってモブギャラコフを襲ってやろう。


邪悪なゴブリンたちならモブギャラコフに酷いことをしてくれそうだ。


それはとても理想的な悲劇だろう。


しかし、少し数が少ないぞ。


10匹しか居ないではないか……。


これでは兵隊としは数が少なすぎる。


モブギャラコフと共にソドム村を壊滅させるほどではないぞ。


なに?


ならば増やせば良いとな?


増やせるのか、深紅の水晶体よ。


本当にゴブリンの数を増やせるのか?


ならば増やしてくれ。


念じる?


それだけか?


まあ、言われた通りに念じてみるぞ。


むむむむむむむむむむっ!!


おお、本当だ!


念じたたけでゴブリンが大地から沸いて出たぞ。


これは面白い、どんどん増やそう。


ゴブリンを増やして軍隊を作るんだ。


ゴブリン大軍団を築いてソドム村を襲うんだ。


100匹もゴブリンが居れば小さなソドム村ぐらい壊滅できるだろう。


くははははは!


これでモブギャラコフの野郎をぶっ殺せるぞ。


長年の因縁に終止符を打てるぞ。


殺せる殺せる殺せる殺せる!!


皆殺しだ皆殺しだ皆殺しだ!!


ジェノサイドだジェノサイドだ!!


さあ、武器を取れゴブリンたちよ。


よし、出陣だ。


100匹のゴブリン大軍団よ、ソドム村を蹂躙するのだ。


殺して殺して殺しまくるのだ!!


きゃはっはははははは!!!!


そして、モブギャラコフの生首を私の前に捧げるのだ。


神である私の前にな!


そう、私は神だ!


ゴブリン帝国の神になるのだ!!


私がこの世の支配者だ!!


ぎゃはっははハはははのギャはハハハはハハハあハア!!!!!





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る