第1話
「—―父さん」
「来たか、ユウリ」
がっしりとした体つきの、ルイ王。
王座から立ち上がり、彼の息子であるユウリ王子を見下す。
「御用とは何でしょうか」
茶色がかかった黒髪に、意思を宿したような真っすぐな瞳。
整った顔立ちがこわばっている。
「スノー・ムーン王国から招待状が届いてな」
「……スノー・ムーン王国?」
ユウリ王子の瞳が見開く。
「ああ。毎年恒例の祝祭だ。今年は私だけでなく、お前宛の招待状も入っている」
「それは……行っても良いということ、ですか」
一瞬だけ、ルイ王の目が伏せた。
「……ああ」
ルイ王のその瞬間をユウリ王子は見逃さなかった。
こわばった表情から真剣な表情に変わった。
「分かっているだろうが、遊び目的ではない。私たちからしたら友好を深めるようなものだ」
「ええ。わかっています」
ルイ王はユウリ王子を見て、彼に招待状を渡した。
『ユウリ王子へ
スノー・ムーン王国の祝祭にご招待します
スノー・ムーン王国一同』
中の内容を見たユウリ王子は小さく笑みを浮かべた。
『ユウリ!』
懐かしいあの頃。
あの時は無邪気に外で遊んでいた。
春は野原、夏は川、秋は森、冬は城の庭で。
彼女の優しい微笑みが好きだった。
けど、彼女にとって外の世界は「毒」そのものだった。
それは何度彼女を苦しめたことか。
『……リリィ』
『ユウリ、仕方ないことだ』
『リリィにはいつ治るの?』
『……わからない。けど、一番苦しいのはお前ではなく、彼女やフィリップだ。それだけは分かっておけ』
それはそうだ。
けど僕だって苦しかった。
彼女に会えなくて、彼女の病気が治らなくて。
……やっと、彼女に会えるんだ。
僕に招待状が来たってことは、彼女は治ったんだ。
だから、会える。
きっと、会える。
ルイ王は険しい目つきで招待状を見ていた。
フローズン・プリンセス 陽菜花 @hn0612
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