大好きなお姉ちゃん
どさっ!!
「なっ、ななななにを言っているんだお前はっ!!?」
「だってー…」
ロットは強打した腰をさすりながら、顔を真っ赤にして叫ぶ。
ニコラも片足でぴょんっと飛び降り、ロットを立たせようと腰に腕を回した。
「……!!い、いいっ!自分で立てる!」
「さっきすんごい音したけど…?」
「(顔が近い!!なんで彼女は平然としているんだ!?)」
あまりに大騒ぎするもんで、通行人の視線が気になってきた。家はすぐそこだったので、ヨロヨロの2人は仲良く馬に掴まりながら歩く。
「ただいまー」
「おかえり!…あれ、ろんちゃん。まだいたの?」
元気よく出迎えてくれたのはマチカ。いつもなら帰っているはずのロットの姿に首を傾げた。
今日は6人でわいわい楽しく夕飯。ロット1人だけ、ニコラが気になってしょうがないけど。
食事中の会話で魔物に遭遇したとか、足を捻って暫く休むとか報告すると。子供達は心配そうに声を上げた。
「大丈夫なのっ!?門番って、門に立ってるだけじゃなかったの!?」
「兵士だからね、色々あるよ」
「にーちゃん女の子なのよ!?そんな…危ないこと…」
「あ…」
アールは悔しそうに唇を噛んで、エリカは涙目で手をぎゅっと握り締めて。スピカとマチカも、今にも泣きそうなのを堪えている。
「ご、ごめんね。こんなこと滅多に無いから!」
「「「「……………」」」」
「「?」」
何故か、4人の視線はロットに注がれている。そりゃもう、じいぃ〜…と。
食後。アールとエリカが、ロットをアールの部屋に連れ込んだ。ベッドに座らせ、正面に2人で仁王立ち。
「なんだ…?」
「ねえろんちゃん。にーちゃんのこと好きだよね?」
「ばはっ!!?」
まさか気付かれていたとは。色恋沙汰に疎すぎるロットは、咄嗟に否定も肯定もできなかった。まあその反応と表情で、白状しているようなものだけど。
「にーちゃんをお嫁さんにしたいの?」
「な…っ!」
何言ってんだ、子供が口出していいことじゃない!と叫ぼうとしたのに。
2人が眉を下げて…本当に苦しげな顔をするものだから。自分も、真摯に向き合わなくては…と居住まいを正した。
「…にーちゃんがぼく達のために、無茶するの…もうやだよ。ロットさんが、にーちゃんを守ってよ…好きなんでしょ?」
「……好きだ。僕だって、兵士の仕事は辞めてもらいたい。そして…お前達も含めて、僕がずっと側で守りたい…」
「「……………」」
その答えを聞き、アールとエリカは顔を見合わせて…「はああぁ〜…」と大きくため息をついた。
「じゃあ告白しなさいよ!」
「そ、それは…!ニコラは恋愛に否定的なんだ、すぐにはできない!」
「むー…!じゃあもう、アレよ!カラダから始まる恋愛もあるって聞いたわ!」
「意味分かって言ってるのかお前ーーー!!?」
ロット山噴火。エリカは多分、キスくらいの意味合いだと思っている。
大騒ぎにスピカ、マチカ、ニコラが「なんだなんだ」と顔を出すけど。なんでもない!と追い出す。
ませているエリカと、純情青年ロットのやり取りを。アールは不機嫌顔で眺めていた。
アールは…できれば自分がニコラをお嫁さんにして、守りたかった。でも自分にはそれだけの力…権力・財力・武力…足りないものが多過ぎる。年齢だって、ニコラより4つも下だ。
だから…その全てを持っているロットに、大好きで大切なニコラを任せたい。そのために彼は、涙を呑んで2人を応援する。
「けど!!!」
「「!?」」
いきなりの大声に、言い合いをしていた2人はギョッとした。
「別にロットさんじゃなくてもいいんだからな!!
うだうだしてて、にーちゃんを取られても知らないぞ!!!」
「…!そうよ、あたし達はにーちゃんを幸せにしてくれるなら、誰でもいいんだもん」
「え!?そうなの!?」
「「そうだよ!」」
子供達の願いは…今まで自分の全てを犠牲にしてきたニコラが幸せになること。
彼女の幸せは…結婚とは限らない。けど今は、安全で安定した生活のため、財力のある男性と結婚してくれたら嬉しい。
その相手として、今のところロットが良さそう…なだけ。
何より大事なのはニコラの心。彼女が好きになった相手を…子供達は兄として認める!
「ロット〜?どうするの、今日泊まってくの?」
「あっ」
そうこうしているうちに、もう夜9時。マチカはすでに寝ている。
ニコラが呼びにくると…アールはみんなを部屋から追い出し鍵を閉めた。
「おやすみっ!」
「お?(反抗期かな?)おやすみアール」
エリカは…ニコラの部屋から、マチカを回収した。
「あれ?」
「あたし達、今日は3人で寝るね!おやすみにーちゃん、ろんちゃん!」
「へあ?」
スピカも連れて、3人娘は部屋に引っ込んで施錠。ニコラはなんだか置いてけぼりにされた気分。
「「…………………」」
この家に、部屋は3つしかない。つまり…ロットが泊まるなら。アールの部屋でも借りないと…なんだが。鍵を開けそうにない。
「………とりあえず。わたしの部屋、来る…?」
「……ああ…」
廊下で突っ立っていても仕方ない。気まずいながらも…誰もいない部屋に入って行った。
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