敵のはずの勇者が告白してくるんだけど!?
藤咲ひかり
敵のはずの勇者が告白してくるんだけど!?
ここは魔王ラムレア=エミノリアが治める魔族の国エミノリア。
そのラムレアが住む城の
「よくぞここまでたどり着いた、勇者よ」
「あなたが魔王? 」
「いかにも」
「ならあなたを倒せば終わりってことね」
「さあ! 始めようぞ! 」
今ここで勇者と魔王の最後の戦いが始まろうとしていた。
「まって」
「なに? 」
戦いが始まるはずだった。
「ここにきて怖気づいたか! 」
「そうじゃない」
「ならなんだというのだ」
これから戦おうというのに碧の様子にラムレアは眉を
「正直な話、もうあまり戦いたくないのよね」
「なんだと? 」
あまりに勇者らしくない碧の言葉にラムレアは
これまでラムレアが倒してきた勇者たちは問答無用でこちらに突っ込んできたというのに、この勇者は戦いたくないなどというのだから困惑しないはずもない。
「
「だからそんなんじゃないって」
「ならばなんだというのだ! 我は魔王で貴様は勇者、戦うのは当然であろう! 」
「頭固いなー」
碧のあまりのこれまでの勇者との違いにラムレアは困惑したままだ。
「なにが目的なのだ」
「目的もなにも、私あなたのことが好きになっちゃったんだもの」
「……はっ?」
あまりの
そして碧の言葉の意味を理解したとたん。
「はぁ!? 」
そのひと際美しい顔を真っ赤に染め上げる。
「なっ、なにをいっておるのだ!? 」
「だから、あなたのことが好きなのよ」
再び碧が告げた好きという言葉にラムレアは顔をさらに赤くする。
この魔王、生まれた時から数百年、ずっと魔王という肩書のためずっと戦いに身を投じてきたのである。
戦闘面以外のことはからっきし、つまりウブなのである。
「我は魔王で貴様は勇者、それ以外の何物でもないのだ! 」
「魔王と勇者が恋をしちゃいけないなんて誰かがいったのかしら? 」
「うー、しかし第一に貴様は我の配下たちを殺したであろうが! そんな貴様を我が許せるとでも思っているのか! 」
「あら、あなたの配下たちは誰も殺してなんかいないわよ」
「え? 」
そんなはずはない、なぜなら先程まで勇者と配下たちの戦いをこの玉座の間で見ていたのだから。
その中では決して少なくない量の血が流れていたはずだった。
「まあ、確かに切りはしたけど死ぬ寸前で回復魔法をかけたから全員生きているはずよ」
碧がそういったその時だった。
「魔王様! その者の言葉は確かであります」
「現にこうして我らは生きております! 」
「どうやらその者はこれまでの勇者とは違うようです」
「…… (コクコク)」
突如、玉座の間の扉が勢いよく開かれたかと思うと先程まで勇者と戦っていたはずの配下たちがなだれ込んできた。
「なんなのだ貴様は……」
「そもそも、私は勝手に召喚されて戦えなんて言われて不満が溜まっているし、召喚される前は殺し合いなんてものは起こらない平和ボケした世界にいたものだからもう殺し合いはうんざりなんだ」
「だから私に求婚すれば逃げられるとでも? 」
「ああ、それは別で純粋に君のことが好きになったんだよ」
「――ッ!!! 」
ただでさえウブで戦闘以外がからっきしなラムレアはもういっぱいいっぱいだった。
「ええい! うるさい! というよりもそれを貴様のことを召喚した王国が許すわけがなかろう! だいたい貴様の仲間たちはどうしたのだ! 」
たとえ勇者であろうとも召喚した王国が許すわけがないだろうし、さらには本来であれば勇者は3,4人のパーティーを組んで挑んでくるはずなのだ。
それなのにこの国を攻めてきたときから碧は一人だった。
「ああ、あの人たちにはもう話をつけてきてあるから問題ない」
「まさか味方を殺しでもしたのか? 」
「そんなわけないだろう、ちゃんとありのままのことを話したら皆なぜかいい笑顔で応援してくれたよ」
ラムレアは頭を抱えた。
勇者の仲間がそんなのでよいのかと。
(はぁ、今代の勇者はもう訳が分からん)
「それで魔王さん、返事はしてもらえるのかな? 」
「阿呆! 断るに決まっておる! 我は魔王、貴様は勇者、それまでだ! 」
ラムレアは
魔王と勇者が恋仲になるなどありえないと。
しかし顔を赤く染めながらなのであまりにも説得力がないのだが……。
「あの、我が王よ」
「なんだ」
そんな中でラムレアの配下の一人がおずおずと手を挙げた。
「正直な話、今代の勇者はこれまでの者たちより実力は確かに上であるかと」
「まさか、我が降参するべきだと? 」
「い、いえそういうわけではないのですが、実力を見ても王に釣り合う存在であるかと」
なぜか配下まで勇者の言葉を後押しするようなことを言い始めた。
「貴様はどちらの味方なのだ! 」
「ですが王よ、そろそろあなた様も身を固めてもよろしいのではないのでしょうか」
一人の配下の言葉に配下たちはうなずく。
配下も勇者の突然の自分たちの王に対する告白に戸惑ってはいたが自身が仕える王に幸せになってもらいたいのは配下たち全員の想いであった。
なにより配下たちは実際に戦い碧の強さを知っていた。
そして思ったのだ、この者なら王に釣り合うだろう。
しかしラムレアはその血に刻まれた魔王としての考えにより首を縦に振ることなどできないのだった。
そんな魔王の様子にしびれを切らした碧は行動に移した。
碧は思い立ったらグイグイ行くタイプだったのだ。
「わかった、誠意を見せればいいんだな」
「は? なにをっ! 」
次の瞬間、碧はラムレアの前まで一瞬で移動していた。
油断していたとはいえ魔王であるラムレアでさえ反応が遅れてしまうほどの速度であった。
「やはり我を殺すことが目的で、んむっ!? 」
ラムレアはやはりかと思い剣を突き出そうとしたが、それよりも早く碧はラムレアの頬を包みそして。
「んーー! んーー!! 」
「んっ」
「「「「あー!!! 」」」」
キスをした。
「んっ」
「んっ、ぷはっ」
息が続き限りの長いキスをラムレアにした碧は唇を離すと、腰がくだけたラムレアの腰に手をまわして笑いかけた。
「どう? これで私の気持ち伝わった? 」
「ひゃい」
ラムレアは顔をこれ以上ないほど赤くしていた。
「魔王様が戦わずして敗れちゃった」
魔王の配下たちは突然の碧の行動に呆然としていた。
そんな周囲の様子も気にせず碧はラムレアに笑いかけたままもう一度尋ねる。
「それで魔王さん、告白の答え聞いてもいいかな」
もうラムレアは魔王と勇者の対立や戦いのことなど頭には残っていなかった。
「ふ、不束者ですが……よろしくおねがいします」
「うん、よろしくラムレア」
そうしてここに勇者と魔王という前例のないカップルが誕生したのだった。
その後、魔王城では碧に翻弄され顔を赤くするラムレアの姿がよく目撃されることとなったのだった。
一方、王国へ帰国した勇者の仲間たちは王に報告を行った。
すると国王は満面の笑みを浮かべて、
「ならば仕方なし! というよりよし! 」
と碧が国に帰国しないなどの
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後書き
王国はもうだめかもしれない。
思いつきでバーっと書いた作品になります。
ウブな女性がガチレズに攻められてあわあわするのいいよね。
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敵のはずの勇者が告白してくるんだけど!? 藤咲ひかり @FujinoHikari
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