思わぬ襲撃
夜になって、俺は亜里沙を連れて真琴さん達のところに行った。
昼間もそうだったけれど夫の
「あら、お友達は一人? 他の方は?」
「いいんだ、こいつだけで」
俺がそう答えると真琴さんは察したらしい。
「あらあら、ひょっとして」
嬉しそうな、それでいて楽しむような笑みを浮かべた。
「ん」
短く相槌を打った。
「え? なに? ちょっと? お兄ちゃんっ?」
対照的に光がうろたえた後、亜里沙を睨んでいる。
「おい光。なんで睨むんだよ」
「だってお兄ちゃんはわたしと結婚してくれるって言ったじゃない。それなのにぃ」
「言ったかそんなこと?」
思わず超反応で返した。
「そうなの? でもごめんなさいね。今、あきちゃんはわたしとお付き合いしてくれてるんだ」
「おい亜里沙。子供と張り合うなよ」
「むぅっ、子供違うしっ!」
「こういうことはきっちり言っておかないと」
光の鋭い視線と亜里沙のちょっと怖い笑みがこっちに向いた。
思わず真琴さんを見る。
「さぁ、ご飯にしましょう」
華麗にスルーされた。
夕食は肉じゃがと味噌汁、おひたしだ。
真琴さんのご飯は相変わらず美味しいんだけど、喉とおりがいつもより悪い。
「あきちゃん、ご飯のおかわり、どう?」
「あ、うん」
思わずうなずいたら、俺のご飯茶碗をめぐって亜里沙と光がガンの飛ばしあいをしている。
「ただいま。おっ、今日は賑やか、……だな……」
勝利さんが帰ってきて、すぐに俺らの修羅場を見抜いて最後はしりすぼみになった。
「はは……は。賑やかですね」
ごめんなさいと苦笑して頭を下げた。
亜里沙だけを連れてきたのは、ちょっとマズったかな。
けど、真琴さんは喜んでくれたし、よしとしよう、うん。
そんなこんなで結城家との食事を終えて、今日は早く休むことにした。
けれど、夜中に部屋のドアをどんどんと激しくたたく音と亜里沙の切羽詰まった声で起こされた。
「あきちゃん! 起きて!」
「なんだ……?」
なおもドアを叩き続ける亜里沙に声をかける。
「ミリーさんが現れたの。サリーのところに」
「な?」
一気に目が覚めた。
ドアを開けるとE-フォンを握りしめた亜里沙が。
とりあえず部屋に入ってもらって事情を聞く。
「電話が、かかってきて、もしもしって言っても反応なくて、でも――」
電話の向こう側でサリーと真祖の声が聞こえたそうだ。
『あなたは何者なの?』
『君達に興味はないが、そちらの人狼に用事があってね。生きていられるとこの子の未練になって厄介なことになるやもしれぬ。さ、渡してもらおうか』
『友達からの大事な預かり人なのよ。渡せないわ』
『そうか。ならば――』
その会話の最後で俺の部屋の前に到着したから聞いていないが、今は電話の向こうはしんと静まり返っているらしい。
……やられたのか?
「とにかくサリーのところに行かないと」
「判った。俺も行こう」
手早く着替えて、亜里沙とバイクに乗って村の外れまで向かう。
「どうした?」
男に声を掛けられる。
「通して!」
後ろの亜里沙が叫ぶ。
「外に出るのに正当な理由がない限り結界を切るわけにいかない。何かあったのか?」
そういや、今ここは守護結界に守られているって話だったな。
「あ、えっと」
亜里沙が口ごもってしまったので怪しまれてしまった。
「すまない。彼女は気が動転しているみたいだ。知り合いが何者かの襲撃を受けていると連絡をしてきたらしい。助けに行きたいんだ」
「なるほど、判った。ちょっと待ってくれ」
門番の男は納得してくれたみたいだ。よかった。
電話でどこかに連絡をしていた男が、結界に手をかざしてから「よし、通っていいぞ」と許可をくれた。
「あきちゃん、ありがとう」
「いや、急ごう」
サリー達の隠れ家にバイクを飛ばした。
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