ワープ、さらにワープ
吸血鬼の監視役のイクスペラーに引き継いで、俺らは六人でダンジョンにもぐることになった。
「ジョージまで来てくれるなんて心強い。もうずっと俺らと一緒に行動してくれたらいいのに」
「光栄だなぁ。けどあちこち探るよう命令されてることが多いからな」
調査、諜報の仕事を頼まれるなんて富川さんからは信頼されてるってことだな。よかったじゃないか。
さて。つながった先は、異世界のダンジョンだ。あの、いろんな色がまだらにまじった何とも言えない色彩の壁の洞窟だ。
ちょっと先に進んだところで道が左右に分かれてる。
慎重にトラップを探知して……。
あ。
見つけ損ねた罠が作動した。ラファエルに攻撃が飛んでいく。
ラファエルが驚きの声を挙げつつ対抗魔法でしのいだ。
「悪い。見つけ損ねた。トラップの発見が難しくなったな……」
「さすが最深部に近いところって感じ?」
「だな」
なんてことを言いながら一歩先に進むと。
また罠が発動してしまった。目標はまたラファエル。
「魔術師殺し」の罠で、魔法力が一番高いヤツに物理攻撃を飛ばしている。
「黒崎君、僕に恨みでもあるの?」
「ごめんて。わざとじゃないんだ」
恨みというかイライラはあるけど、とは言えない。
結局みんなにはちょっと離れてついてきてもらうことにした。最初からそうしておけばよかったな。
右の通路の奥には扉があるけれど、どこかにある開錠スイッチを押さないと開かないみたいだな。
それじゃ左だ。
扉の先は大きな部屋で、敵が六体いる。
両手がブレードになっているル・アディンが四体、ケイオスマジシャン一体、そしてみたことのないヤツだ。身長五メートル近い機械兵みたいなヤツで、腕がめちゃ太いのが特徴的だ。
俺がデータ収集器を連中に向けて操作している間に亜里沙がE-フォンのデータ検索をする。
「新しいのはルベルクーダ。離れた敵に照準をあわせて、腕を飛ばしてくるって」
ロケットパンチか。当たると麻痺のペナルティ付きとか凶悪だな。
「物理防御が高いヘンリーが的になるのがいいのかな。そばにリンメイがいれば補助と回復ができるし」
作戦は決まった。が。
亜里沙が大きく前へ踏み出すと、左奥へと瞬間移動した。
「……えっ? なにこれっ?」
もう一歩、今度は右に動くとさらに奥へ。近くにル・アディンが二体いるので亜里沙はそのままそいつと戦闘開始だ。
「まさか、床全部にワープトラップ?」
「……そうっぽいな」
「解除は?」
言われて、罠探知をするが、部屋全体にかかっているギミックみたいなものだから――。
「無理だな」
「どこに行くか、メモするアル」
亜里沙は難なく戦えるだろうから、俺は途中まで亜里沙と同じところへ行って、別の方向へと動く。部屋の中央に移動したので左隣に行くと、亜里沙と同じところへ到着した。
結局俺もこいつと戦うことになるか。早く倒して厄介なマジシャンを相手にしたいところだ。
ル・アディンとの戦いはそうてこずるものでもない。さっさと倒して隣のマジシャンのところに到達するルートを見つけないと……。
くそぉ、どこもハズレかよっ!
ジョージも別ルートを試してくれているが、ル・アディンと接敵したので戦闘になった。
「私達もいきましょう。リンメイは私から離れないでください」
「判ったアル」
「僕は?」
「攻撃魔法を唱えるならどうぞ。ここならパンチは射程外ですから大丈夫です」
それなら、とばかりにラファエルはいつもの大魔法を詠唱し始めた。
仲間のやり取りを耳に入れつつ、亜里沙とル・アディンを二体倒した。
「まだ試してないところに行ってみるか」
「りょーかい」
同じところにとどまる床の範囲は大体五メートル四方だ。広い部屋なので升目として考えると縦に五つ、横に八つぐらいに区切られるな。あちこちにぴょんぴょん飛びまくるが一向にマジシャンのところに届かない。
えぇい、くそっ。まさにしらみつぶしだっ。
その時。
「くろちゃき! 今いるところから左方向はまだ行ってないネ」
きっちりメモを取ってたリンメイがアドバイスをくれた。
「お、サンキュ」
行ってみると、マジシャンの前に到達できたっ。
リンメイ、いい仕事だ。
ジョージも目の前の敵を倒して移動を始める。
ラファエルの魔法が炸裂して、ルベルクーダにダメージが入った。
よし、いい調子だ。
が、敵もやられっぱなしではいてくれない。
マジシャンが魔法を唱え始めた。
詠唱を中断しないかと攻撃してみるが、動じていない。
撃つのは阻止できないか。
「火炎魔法が来るぞっ」
俺の声と、マジシャンの呪文詠唱の終わりが、重なった。
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