ゲートがすぐにないと不安になる
テ・ミュルエのビームが飛んでくるかと覚悟をしていた。が。
「天の怒りを受けよ。『裁きの光』」
ラファエルの呪文詠唱の声とともに、光のシャワーが降ってきた。
ド派手な魔法は本来範囲攻撃のはずだが、でかいワームにはちょうどいいのかもしれない。
なんてことを考える俺の前で、テ・ミュルエはぴくぴくと体を震わせている。かなり効いたな。
ナイス、ラファエル。
「チャンス。わたしも行くよ! 光をも切り裂け。『裂光剣』」
光の魔法の後に光を切り裂くって名前のスキルなのがちょっと笑える。
……あれ? 亜里沙が初めてそのスキルを使った時、左の目が虹色に光ってたと思うんだけど、今は光ってないな。
あの時の見間違いか、それとも発動条件とかがあるのかもしれない。
亜里沙の攻撃が外殻を貫いた。
刃の当たった場所から殻がぼろぼろと剥がれ落ちていく。
見るからに柔らかそうな肉質だ。弱点の赤い点もしっかり見える。
「よし、行けるぞ」
大剣を拾ったヘンリーと、短剣を構えなおした俺も参戦だ。
テ・ミュルエも最後のあがきといわんばかりに猛攻を仕掛けてくる。
触手の薙ぎ払い、突き刺し、口から一本のビームに加えて、散弾みたいに光の弾をばらまいてきた!
足場が限られてるから逃げる場所がない。皆がダメージを食らったが、リンメイが回復魔法を準備してくれていたから助かった。
また触手が高速で伸びてくる。
根元を――、切った。
切断した触手が足場の上でビチビチと跳ねる。
すかさず異次元ボックスからハサミと収納ケースを取り出して、触手を回収した。
「狙ってたアルね?」
「当然。異世界の魔物は倒すと消えるからな」
「ならば遠慮はいりませんね」
ヘンリーがハリウォンの大剣を振りかぶる。高身長の大上段からの力一杯に振り下ろされた大剣の刃が、殻の破れた肉に直撃する。
「好機を最大限に。『切り返し』」
振り下ろされた大剣を、またすごいスピードで振り上げる。腕周辺の筋肉がどうにかなりそうな動きだけどスキルだから大丈夫だろう。
ヘンリーの剣が見事に弱点を切り裂いた。
巨大ワームテ・ミュルエはぴくんと大きく体を震わせて、倒れながら光になって消えていく。
やっぱ消えるんだな。あの触手だけで足りるかな?
「エリアボスやっつけたアル!」
「でもワープゲートがでないね」
リンメイとラファエルが周りをきょろきょろとみている。
ゲートはないが、足場の先に魔法陣がある。
「……全身鎧か」
鑑定する。
ハリウォンの鎧。
かつて魔物の大群を退けた戦士ハリウォンの装備の一つ。
装備者の任意でダメージを半減する。一日に一度使用可。
ハリウォンの剣、盾と共に装備するとさらなる効果がある。
へぇ、結構詳しいデータが判ったな。
ってことでこれはヘンリーのだな。神父服の上に全身鎧ってなかなかシュールというかレアな装備だけど。
わりとスリムなデザインだから見れなくはない。
「いいなぁ。リンメイも特殊武器ほしいアル」
「リンメイちゃんは陰陽師だから、特殊式神かな」
「リンメイまだ式神作れないヨ。もうちょっと強くなったらね、ってパパは言ってるネ」
そういやこいつ陰陽師の家系とか言ってたな。
で、帰還と先へ進むゲートはどこかな。
「さすがにここにゲートは狭いから出てないとか?」
言いながら前の部屋に戻ると、あった。
「ゲートがすぐに見つからないとドキドキするね」
亜里沙がほっとした顔で言う。
最初にこのダンジョンでエリア踏破した時に、あわや帰れないってことになってたからな。ちょっとしたトラウマだな。
月宮にテ・ミュルエ討伐の連絡を入れて、本部に戻る。
早速触手をリカルドさん筆頭の研究チームに渡してきた。
俺も研究したいなぁ。
「あんたはダンジョン探索が優先よ」
月宮に釘を刺されてしまった。
時間がある時ならオッケーってことかな?
ともあれ、これでダンジョンの謎がまた大きく解明されるに違いない。
(File06 変異ウィルス 了)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます