判りやすい誘い
ワープゲートを抜けると、ドラゴンを倒した部屋だった。すぐとなりに次のエリアに続くゲートがある。リアという女性が残したメッセージカプセルも残ったままだ。
リアはまだ戻ってきてないんだろうな。どこまで行ったんだろう。彼女が一人だとすると相当強いのかな。
「黒崎くん、どうしたの?」
「いや、なんでもない。行こうか」
気を取り直して、ゲートに入った。
ゲートが光って一瞬で景色が変わる。通路の先に部屋があるみたいだ。俺が先頭に立って罠を探知しながら進む。
部屋の入口の前に槍のトラップがあった。そのまま進むと上から落ちてくる槍に刺される。慎重に罠を解除した。
「くろちゃきってゲームのシーフって感じアルね」
後ろでリンメイが呑気な声で言う。
「まぁ、あながち間違ってないな。俺がイクスペラーになった時に訓練つけてくれた師匠がそっち系の人だから」
「師匠、シーフアルか?」
「盗賊っていうより技術的には諜報系」
「技術的には、って他は?」
聖が笑うのに、俺は苦笑を返した。
「師匠、忍者にすごくあこがれてるから自称忍者。『諜報はそもそも古くは忍者が得意としたこと。すなわち諜報員とは忍者である』ってな感じで」
忍者よりも昔にも諜報員みたいなことをしてた人はいると思うんだけどな。
そんな話をしながら部屋に入った。
それほど大きくない部屋の奥に、さらに先に進む通路があるが、レーザーが二本、道をふさいで行く手を阻んでいる。
部屋の左右にも通路がある。先の方までは見通せないけれど。
「ダンジョンにレーザーとは、なんだか違和感ですね」
「うん。ダンジョンってそういうハイテクなのはなさそうなイメージだった」
ヘンリーと聖が感想を述べている。
元々人為的な罠とかがあるから、人為的に設置されたフェンスがあるのは納得だけど、確かに石造りのダンジョンでこれは浮いてるよな。
レーザーフェンスの色は赤と青。これを解除する赤と青のスイッチがどこかにある、ってところだな。
ちなみに無理やり突破しようとするとかなりのダメージを負うことになるから順当に装置を切る方が断然いい。
見立てを言うと、左右の通路の先に行ってみようという意見でまとまった。
まずは右の通路に入る。真っ直ぐな道の先の壁に早速赤いボタンがある。道は左にまだ続いているが……。
「ボタン見つけたアル」
リンメイが俺を追い越した。
「おい、待て、まだ調べてな――」
リンメイがボタンを押した。ぽちっと軽快な音をたてたかと
思うと、ゴゴゴゴと不穏な音と揺れが。
ドーン! と通路の先に落ちてきたのは巨大な丸い岩。
その先は考えるまでもない。
真っ青になった俺らは岩に追いかけられて元の部屋に全速力だ。
「リンメイ! おまえなぁっ!」
「赤いスイッチだったからつい、えへっ。ゴメンアル」
「二重三重のトラップでなくてよかった。下手したらいきなり全員岩で圧死だぞ」
岩が落ちてきたら戻る通路も壁で遮断されるとか、逃げ戻って部屋に飛び込んだ瞬間、落とし穴とか、まさに本気で殺しに来るトラップもあると聞く。
今度は慎重に通路を進んで、部屋の前まで無事到着した。
部屋の中に、魔物がいる。
「前に来た時にダンジョンの外にいたヤツね」
聖が言う。うなずいた。
メタリックな巨大な蚊だ。三匹いる。
「リンメイ。タブレットを」
「任せるアル」
リンメイがタブレットのカメラで蚊を撮影する。すぐに画面に魔物の情報が出てきた。
『ジャイアントモス 危険度:小
攻撃手段:吸血(物理、単体)、体当たり(物理、単体)
弱点:火系の攻撃(物理、魔法)
蚊が巨大化したもの。複数体いる場合は連携攻撃に注意』
聖が倒したヤツと変わらないみたいだな。
「体当たりが物理って当たり前よね」
「そうとも限りませんよ。見た目は物理的攻撃でも魔法を付与すればダメージを防ぐのに魔法的防御が必要です」
聖のつぶやきにヘンリーが答えてくれた。
「前のドラゴンの戦いでリンメイがブレス攻撃に魔法防御を張ってくれたのは、ブレスが魔法的攻撃力によるものだからだ」
補足しておく。
聖はなるほどとうなずいた。
戦術は、MPや闘気を温存しての物理攻撃メインかな。
「多分そんなに苦戦はしないはずだ。一体ずつ倒していこう」
作戦が決まって、俺達は部屋に入った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます