創作小説
詩井
第1話(1)
痛い。苦しい。辛い。怖い。悲しい。寂しい。死にたい。
助けて、助けて、助けて、誰か助けて、私を、ここから救い出して
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
ピピピピピピピピッ
鬱陶しい目覚ましの音で、重い瞼を上げる。
なんだか目覚めが悪い。
昨日、何時に寝たんだっけ…。
重い腕を動かし、目覚ましを止める。
また朝がきてしまった。
なんでもないことを考えながら、私はしばらくぼーっとする。
そういえば、嫌な夢を見た気がする。
心做しか息が上がっていた。
とりあえず体を起こす。
「ふあぁ…」
まだとても眠い。
そうだ、昨日寝たのは夜中の3時頃だったかな…。
あまり覚えていない。
いつものことだ。
「今日の1限目は国語か…。」
まあ、なんにせよ学校を休む私にとっては無縁の話。
休むのは悪い事だとはわかっている。でも…
とりあえず学校のことは考えないようにして、スマホをチェック。
今日の予定は、まず好きなVTuberのグッズの発売日だから買いに行って、壊れたイヤホンを買って、本屋に寄って新刊をチェックして…やることがいっぱいだ。
動くのは少し憂鬱だけど…とりあえず顔を洗おう。
そう思って、私はベッドから降りた。
顔を洗い終えたら、私は髪の毛を整えて、着替えて、持ち物の準備をして、家を出る。
「いってきます」
私はドアを開ける。
平日の街は、いつもより賑やかさが減っている。
でも人が少ないってわけじゃないから、あんまり行きたくない。
あ、スタブで新作出てる…。後で買ってみようかな。
わ、ビジョンに推しアニメの予告映ってるじゃん。次話見たっけ…帰ってから確認しよう。
たまにチラチラ見てくる人たちの視線が痛い。
わかってる。わかってるから。
とりあえず気にしていないフリをして私は足を進めた。
いろいろ考え事をしていたら、いつの間にか店に着いていた。
オタク向けのグッズが沢山売っている、専門店だ。
今から買うのは、好きなVTuberのグッズ。
名前は「晴流 さくらこ」。
ファン界隈では「さくぴー」と呼ばれている。ちなみに今では本人も認知済み。
見た目はかわいいのに毒舌なのがすごく好みで、見た瞬間に好きになってしまい、そこからグッズなどを集めるようになった。ちなみに配信のアーカイブももちろん、全てチェックしている。
ただあまりまだ有名じゃないので、グッズを販売しているところが少ないのが残念。
お店に入ると、私は慣れた足取りでVTuber関連のグッズが売っているところまで進んだ。
お目当てのアクリルスタンドを見つけると、すぐに手に取った。
ああ、やっぱり今日もさくぴーは可愛い!
無くなってなくてよかった…。
店から出た私は、とりあえずベンチに座る。
疲れたなあ。歩くだけで精神が消耗される…。
すると、スマホの通知が鳴った。私はすぐにスマホをバッグから出し、通知で表示されたアプリを開く。
それは、今まさにさくらこがSNSを更新した通知だっだ。
『スタブの新作かわい〜!みんなはスタブ何が好き?』
ちなみにそのツイートには、さくぴーのイラストが描かれたオシャレなフラペチーノの写真が添えられてある。
いいなあ、スタブ。私は買おうと思ってるけどお金が余るか心配だし…さくぴーと行ったらすごく楽しいだろうなぁ。
すぐにいいねとリツイートをし、リプを送った。
さくぴーの投稿にはすぐに反応をしないと、気が済まない。
ちなみに私は毎回こうやってリプを送っているので、たまに本人からリプが来ることがある。
その時、決まって私はいいねを押して、またリプを送る。
この推し活をしている時こそが、唯一の私の幸せな時間なのだ。
そうやってスマホを眺め少しニヤニヤしていると、気が緩んだのか、バッグを落としてしまった。
ああ、最悪!
ガラガラと、ハンカチやらポーチやらが音を立てて落ちてしまう。
周りの人が一斉に私の方を向く。
怖い。やめて。見ないで。見ないでよ。
頭の中はぐるぐる回るばかり。
そうやって動けずにいた時。
「大丈夫?」
目の前に、派手な容姿の女の人が立っていた。
派手な髪色に、派手な化粧、派手な服装。
今で言う、地雷系と呼ばれるファッションだ。
こういう人は苦手だ。こう言っちゃあれだけど、なんかちょっと、怖い。
でも、なんだろう。この人の声、どこかで聞いたような気がする。
考えているうちに、女の人は私のバッグを拾ってくれていた。
「もー、気をつけなよ」
目の前に立っていた、その女の人の声は。
まさに、晴流さくらこの声にそっくりだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます