ゴールドアーナー~こちら、雲母学園賞金稼ぎ部~
クラプト(Corrupt)/松浜神ヰ/ハ
第1部 第3雲母学園篇 第1章
第1話
これは、およそ60年ほど前の話。6人の幼馴染であり親友であった少年少女は誓い合った。いつか、それぞれで誇れる学校を作って1つの要塞型学園都市を作ろう。と。
その
10年後であるおよそ50年ほど前、その夢は実現され、人里から離れた広大な平地に外界から隔てるように巨大な壁で囲まれた超要塞型学園都市<雲母>が造られた。
中高一貫の学校であり、そこでは在校中の生徒や一部の生徒の家族が住んでいた。また、大きな寮や住宅街、色々な店のそろった商店街も存在し、本格的な学園都市になっていた。
しかし、他の国や地域は人里離れた過疎地の中でも屈指の過疎地に世界最大級の学園都市ができたことが面白くないらしく、たまにテロ攻撃や住民生活の妨害などが行われた。それを対処するのも生徒の役目である。
生徒たちは授業時間以外は基本自由に過ごし、部に所属するものや勉強をする者、商店街でアルバイトする者などがいた。
この学園都市の中には6つの学校それぞれで誇れるものがある。それは、『部活動の量が異常かつ種類が豊富』というところだった。
運動部ならバスケットボール部、サッカー部、野球部、文化部なら新聞部、美術部、茶道部などの安易に想像がつくものから、華道部、カラオケ部、ボランティア部などの特殊なものもあった。それぞれの学校で推定100を超える部数があるといわれ、中には部を幾つか掛け持ちする生徒も少なくなかった。
特殊な部は全ての学校にあるものは無いのだが、その中に例外で6つ全ての学校に存在する特殊な部があった。その名は、「賞金稼ぎ部」。この部は、様々な高額の懸賞金や賞金のかかった依頼やトーナメントなどで賞金を勝ち取り――あるいは強奪――、それを学校の活動資金にするという部だった。
*
ここは第3雲母学園。賞金稼ぎ部とかいう部の顧問に、何故か俺はされてしまった。授業開始は明日から。つまり、生徒1人の顔すら1ミリも知らない新米教師である俺がこんなおっかない部の顧問にならなくちゃいけないんだ?もしもそれで生徒が死んだら俺の責任?依頼とか全部失敗して資金不足で廃校になったら俺の責任?たまったモンじゃない。こっちにも選択権はあるはずだ。もしも今日で散々だと思ったらさすがに変更してもらおう…。
俺はそんなことを考えながら「賞金稼ぎ部」の部室のドアを開けた…。
「誰かいないかー、いるなら返事してくれー」
呼びかけてみるが、誰もいない。部活動の開始時間まであと5分もないはずだが…。
結局、5分待っても10分待っても部員たちは誰1人として来る気配はなかった。仕方がない、俺もくつろいで待つか。そう思って床に寝転がっていたら、気づいた時には寝てしまった…
*
ふと目を覚ますと、銀髪の頭から1本の細い角を生やした生徒らしき少女が顔を覗き込んでいた。そして、床で寝転んでいたはずなのに後頭部の感覚だけ柔らかい…。これってまさか膝枕!?
瞬時に察した俺は飛び起きた。
「大丈夫でしたか。床に寝転がっていたので何かあったのかと…」
「いや!?俺は今日からこの部の顧問なんだが…」
「それで、なぜ寝転がっていたんですか?」
「それは、開始時間になっても誰も来ないから暇で寝てただけで…」
「ふふっ」
彼女は不意に笑った。何かおかしかったのか?
「え?何?今、俺変なこと言った?」
「いえ、そうじゃないんです。ただ、また学園長がウソをついたんだなって…」
「え?ウソ?」
あの学園長…。俺にヤバい部を押し付けた上にそんなことを…。
「はい。もしかしてですけど、2時の前には来ていましたね?」
「え?なんでそれが…」
「やっぱりそうですか…。今は2時40分、本当の開始時間は3時からなんですが…。でも、学園長に悪気はないんです!あえて早い時間を教えて先生が絶対に遅れないようにしてくれたんですよ。学園長、悪いウソは
「そ、そっか。それで、君は?」
「私はミコ。大林ミコです。明日から高等部3年生、去年から部長をやっています。よろしくお願いします」
「よ、よろしく…。え?部長!?こんな危ない部の!?」
「あ、あの…。そこまで危ない部ではないですが…」
「え?賞金稼ぎ部って賞金首とか追っかけて殺したり、地下とかで貴族がやってるデスマッチのトーナメントに参加してギリギリで生き残ったりとかじゃないの?」
「えっと、はい。イメージとしてはそこまで間違ってないんですが、この第3雲母学園の賞金稼ぎ部は今年までは危なくないですよ」
「え?今年まで?」
「はい。過去には死んでしまって救いきれなかった部員や友達もいました。しかし、殆どの部員は私の力で助けてきましたから…」
「ミコの力?」
「はい。私、見てもらったら分かると思うんですけど
そういえば、一角獣人は治癒魔法に
「そうか。つまり、ミコがみんなを守ってきたわけか」
「はい。それと、これを聞いて気を悪くしないでほしいんですが、先生が今日からこの部の顧問になられた理由なんですが…」
「何だ?よっぽどのこと何とも思わないと思うけど」
「実は、前の顧問の先生は私たちが賞金首を殺すのに同行してきて殺されてしまい、それで今回、それを知らない新米の先生方にここの顧問をやらせえよう、という話が出て…」
「…そんなことがあったのか。それで、もしも俺が同行しない方がいいなら俺はミコたちが戦ったりする時はどうすればいい?」
「もちろん、よっぽどのことがない同行しないでください。部長としての私からのお願いです!」
「なら、俺はどうやったら依頼遂行中に役に立てばいいんだ?」
「今、ラジコン部に長距離遠隔操作ができるカメラ、スピーカー、マイクの付いたドローンを開発してもらっています。なので、それで指示を出してください。私たちもやっぱり、先生の声があった方が安心して活動できますから」
そう言って、彼女はにっこり笑った。
「おー、コレが新しい顧問か!」
先生をコレ呼ばわりする…。とんでもない生徒が来たようだ。
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