依鳥緑は神様だと言う
塩八 マフユ
0.依鳥緑は神様だと言う
十何度目かの春。
一つに束ねた黒髪と新調した銀縁のメガネ。ほんの少しのイメチェンをした私、津々浦 麗は、家から近く評判もまぁまぁ悪くない進学校に入学した。
「よろしくね津々浦さん、私は依鳥 緑」
そこで私は――。
「実は神様なの」
神様に出会った。
『依鳥緑は神様だと言う』
私は神様の存在の真偽をどちらとも思っていない。
もっと言えば都合のいい時だけ信じている。
落としたヘアゴムが簡単に見つかった時。駐輪場で自転車がドミノ倒しになっていたのに、私の自転車が無事だった時。テストの四択問題を当てずっぽうで正解した時。
そんな、日頃の行いが良かった時に感謝し、何か選択に賭ける瞬間に祈ったりするだけ。
つまりは全く信じていないわけではないが、信心深いわけでもない、そんなところ。
だから彼女が神様だと名乗るのなら、きっと神なのだろう。
依鳥緑は神様だと言う。
中性的な背格好に、のらりくらりとした振る舞い。小テストの日に顔をしかめたり、今日の晩御飯に思いを馳せる。そんな掴みどころのない、それでいてどこにでもいる高校生な彼女は自分が神様であるとある日口にした。
神様と言っても特別な力や御加護があるわけではないらしく、人に紛れて人を学び、識るのが彼女の役割だと言う。
なんでも、神様達が決め事をする時に、人の世の事なのだから、人の視線と立場からの意見が必要だと言う話題になったそうだ。
その結果として、人の立場。まるきり人である〝人の神様〟依鳥緑が生まれたとのことだ。
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