【最終章】魔法少女ザキ、最後の冒険。〜あなただけしか知らない世界〜

山下若菜

滅びの時

「…どこで、間違えてしまったんでしょうかね」


砕けたガラスペンの欠片が辺り一面に降り注ぐ中、岡崎弘子おかざきひろこはそう呟いた。


天を仰ぎ背中から倒れゆく弘子を、オレンジ色の柔らかな羽が包んだ。

「何にも、間違いなんてなかったよ」

弘子を抱えたブッコローは、瞳から幾粒もの雫を落とした。

「間違いなんかなかった。そのときそのとき必要な方へ、正しいと思う方へ、歩いて行った結果なだけなんだから」

「そう、ですか…」

弘子は泣いているブッコローの先を見つめた。

空いっぱいに大地が迫り落ちてくる。

「認めなくちゃ⋯いけないんですかね…」

「もう喋るなよザキ。もういいから⋯」

弘子を抱えるブッコローの羽は、溢れる緋色で染まっていく。

「ザキは本当に良くやってくれた。だからもういい、もういいんだよ⋯」

「ねぇブッコロー⋯私たちこれまでたくさん頑張って来たのに⋯本当に認めなくちゃいけないんでしょうか⋯」

「だからもう喋るなって」

「王国が落ちることも、人が人らしく生きられないこの世界も、全部⋯全部認めなくちゃいけないんですか?」

空を見つめる弘子の頬に、雫が伝った。


「この世界が、滅びることも⋯」

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