一角と千角3 人の縁は神の采配
ましさかはぶ子
研修
他のケアハウス一寸法師から研修に一ヶ月、社員が来ることとなった。
「
「
男女二人の若い社員だ。
「しかしまあ、」
事務所でテーブルをはさんで金剛と二人の若者が座っている。
金剛が書類を見ながら言った。
「美行君が男性で衣織さんが女性か。
漢字を見ると大体分かるが呼び方だけだとややこしいな。」
言われた二人は苦笑いする。
「昔からそうなんですよ、私と美行はよく間違えられて。」
「そうなのか。青葉君のお父さんは前線は引退されたが、
後進の指導を行っているな。
お元気か。」
青葉美行と呼ばれた切れ長の眼差しの
涼やかな顔立ちの男性が金剛を見た。
「はい、お陰様で。
父から金剛先生によろしくと言われています。」
「ああ、青葉さんとは何度も剣を交えた事がある。
切れ味の鋭い素晴らしい剣士だ。」
青葉美行が少し微笑む。
「津郷さんは青葉君と幼馴染らしいな。」
凛とした表情の津郷衣織が金剛を見た。
彼女は優しい顔立ちだが眼差しは真っすぐだ。
「はい、その関係で青葉先生に剣を習っていました。
私も金剛先生に色々と教わって来いと青葉先生に言われました。」
金剛が頭を掻く。
「先生と言われても足が悪いからな、
何を教えられるか分からんが、
とりあえず先生は止めて金剛と呼んでくれ。
あ、豆太郎、」
その時事務所の入り口に豆太郎が桃介、ピーチと一緒に現れた。
呼ばれた豆太郎が金剛を見る。
そしてその前にいる二人に気が付いた。
「ああ、」
豆太郎がにっこりと笑う。
「柊豆太郎です。話は聞いています。」
二人は立ち上がり頭を下げた。
「津郷衣織です。」
「……青葉美行です。」
桃介とピーチが二人に近づき匂いを嗅ぐと尻尾を振った。
「僕は桃介、こちらはピーチだよ。
よろしくね。」
尻尾を振る二匹を見て衣織がにこにこと笑い頭を撫でた。
「なんて立派な神獣……。可愛い。」
豆太郎が近くの椅子に座ると二人も座った。
桃介が衣織の膝に頭を乗せて彼女を見上げている。
そして美行の膝にはピーチが頭を乗せた。
大きな手がピーチの頭を撫でる。
その仕草は優しい。
だが彼の目は違う所を見ていた。
豆太郎を見ている。
豆太郎は特に変わりなくにこにことしているだけだが、
美行の目の奥には別の色があった。
ピーチが彼を見上げる。
怪しい人ではない事はピーチには分かっていた。
だがなぜあのような目で豆太郎を見るのだろうか。
ピーチには分からなかった。
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