湖畔の蔦這う小屋敷より
仔羊
夜を撫でる風
やけに目が冴えている。1時間ほど前に飲んだ珈琲の
就寢前に飲む
幾ら珈琲の味を思い出しても、目は冴えたままだった…―――柔らかい枕にうずめていた顔を上げ、身体を起こす。あんまり眠れそうに無いので、
優しい微風が
雲の隙閒から、僅かな月明かりがシェリルを照らす。
ホー…ホー……遠くから、梟の
伏せていた瞼をあけると、遠くの木の枝に梟の羽根が羽ばたくのがちらりと見えた。
目を瞑っていて見えなかった景色が、眼前に広がる―――月光に照らされきらきらと輝く湖の水面と、周りの草木がまるで油繪の様に美しく、思わず見蕩れてしまう。窓際に腕を組み、服の
夜に浸っていると、先程まで鳴いていた梟が此方へ飛んでくる……大きく羽根をはためかせ、窓際に降り立つ。
「
小さく声を漏らし、手紙を受け取る。薔薇の模様付の、洒落た紅い封蝋の付いている面を裏返すと、差出人の名前が記されていた。
“ ヴィヴェカ・ロビン ”…踊る様に華奢な線で書かれた英字を瞳に映すと、シェリルは少し驚いた様な
『 親愛なるシェリルへ
此方の生活が一段落したので、やっと貴女に手紙を出せたわ。何年も待たせてごめんね。
貴女の事だから平氣だと思うけど、
それより、いい話があるの。少しの閒其方へ
此方の地方の珍しいお土產とかたくさん持って歸るわ。貴女がこれを
こっちは風が强かったり寒い日が
屋敷の蔦がどのくらい伸びてるか少し樂しみにしているわね。
じゃあ、おやすみ。夜更かしをしてはダメよ。
雪の降る夜より ヴィヴェカ 』
“あらまぁ、なんということでしょう、ベッキー!歸ってきてくれるのですね、何年ぶりでしょう。”シェリルは心の中で、舞い踊るような嬉しさに包まれた。
梟が首を傾げて此方を見つめている。――梟の視線に氣づき、はっと我に返る。寢て起きたら早く支度をしなければ。晝閒燒いたパウンドケーキの殘りがあるのを思い出し、彼女が歸ってきたらそれでもてなそうと――いけない、夜更かしはだめと言われたばかりでしょうに。つい、密かに氣分が高揚するのは、シェリルの惡い癖だった。
“いけないわ、これではベッキーにまた怒られてしまうわね。嗚呼、こんなにも夜が早く明けて欲しいと思うだなんて、何時ぶりかしら……。”――シェリルはトントンと
湖畔の蔦這う小屋敷より 仔羊 @B0kuze1-6
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