第17話 バドワイザーの CM のような
あの子に初めて会ったのは夏だった。川べりで、バーベキューをやってた時、僕らは木陰で休もうと先を争って、日陰に入ろうとしていた。その娘はその時流行っていたバドワイザーの T シャツを着ていて、
テレビで見るバドワイザーの CM のような姿で立っていた。僕はコマーシャルの中にでも入り込んだような気分になっていた。顔はその頃よくトレンディドラマに出ていた水野真紀だかミキだかに、ほとんどそっくりという位に似ていた。彼女はデザイナーだと言っていた。特に子供服関係のデザインをやっていると言っていた。僕はあんまりその女性の職業には興味なかったんだけど、その娘が付き合っている男には興味を持たざるおえなかった。彼女はどこに留めても目立つルーフが空いた黄色いフェアレディに乗った男と付き合っていた。でも彼女は、その男のことをいつも僕にしつこいのよとか、もう嫌なのよとか言っていた。本気で言っているのかは分からなかったけど、彼女はどうも僕に興味を持っているみたいな感じだった。
僕がはっきり返事をしなかったので彼女は結局黄色いフェアレディに乗ったその男と 結婚をすることになった。結婚が決まってからも僕の方を見るとき、いつも彼女は少し訴えるような目をしていた。僕はヤンキーなんかと付き合ったこともないし、話をしたこともなかったので、その黄色いフェアレディに乗った色の黒い男が苦手だった。できれば関わりになりたくなくて、いつも避けていた。 今思えば彼女が最初に僕たちに飲み物を持ってきてくれた時から、彼女は何か言いたげな表情だった。色の黒い男の方を気にしながら時々目配せをしていた。あの時は気付かなかったけど、あの色の黒い男がもうその時から近くにいたんだ。彼女は魅力的な女なので気にはなっていた。
僕が次に彼女に会った時はもう12月になっていた。クリスマス会だか何かでみんな騒いでいた。誰かの誕生日か結婚式のお祝いだったかもしれない。彼女は酔っていたからか、普段から結構お酒が好きなで酔ってしまうことはまずなかったんだけど、その場の雰囲気で僕にいきなりキスをしてきた。みんなが見ているのに。彼女にとってはそんなことは普通のことだったのかもしれないが、 こちらはまだそういうことに慣れていなかったのでドッキリした。その日は確か彼女だけじゃなくてもう一人誰かにキスされたような気がしたけど、そちらは忘れてしまった。
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