第2話

3月27日水曜日 4時50分

あやこさんによく似た、少しばかり背が高すぎる女性は、今日はセブンイレブンにいなかった。今日のバイトのシフトに入っていないらしい。代わりに入っていた女性は、一見文子さんかと思うほど顔の雰囲気も背格好も似ていたが、よく見ると全くの別人だった。文子さんのような美しさはなかった。やはり文子さんは別格だ。そこらへんにいるような女性とは全然違う。 だから先週の金曜日に見たあの女性は稀な例だ。本当に背は文子さんより高いかったけど顔の感じ、美しさは文子さんによく似ていた。もう一度会ってよく見てみたかった。探し始めた途端に会ったきりで、もう2回も3回もコンビニに行っているのに会えていない。 バイトに来ていないのだ。

その代わりにと言っては何だが、何と同じコンビニで文子さんのお父さんとばったり会った。同じ職場にいても会うことはあまりない。なのにこんな所で出会うとは全く思わなかった。正直、少し焦った。でも何も後ろめたいことはしていなかったので、焦る必要はなかった。あやこさんはもう栃木県に行ったらしい。それで一緒に住むことになっている女性にお父さんもあって安心したそうだ。

本当に女の子だったんだ、僕は男なのかもしれないという疑いを持っていたが、本当に女の子と一緒に暮らすらしい。しかも、その女性の家に二人で住むんだそうだ。その女性は文子さんよりも三つぐらい年上なんだそうだ。そして同じ支援学級の教員になろうと思っているような人ではなくて、全然違う職業に就いている女性なんだそうだ。

まったく予想とはことごとく違っている。一緒に住むようになった理由としてはその女性が一緒に住んでいたおばあちゃんが亡くなられて、広い家ががらんとしてしまったので誰か一緒に住んでくれる人はいないかなと思って探していたらしい。そこへちょうどあやこさんがゲームか何かのサイトのSNSでその女性と知り合って、 趣味や考え方が合って一緒に住むことに決めたらしい。それ以前は繋がりも何もなかったのに良く一度や二度会ったぐらいで一緒に住む気になったなぁと僕やお父さんの世代は思ってしまうが、今どきの若い人は違うらしい。あまり慎重にならないこと、それが若さというものなのかもしれない。

予想とは全く違っていた。驚いた。お父さんも驚いていたようだけど僕も驚いた。男でもなく女性で、しかも三つぐらい年上で職業も全く違う女性と一緒に暮らす。 予想だにしなかった結果だ。予想と現実ってのはこんなにも違ったりするんだな、と改めて思った。

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