月の魔力・その数値化による顛末。
天西 照実
第1話
大学で私が『夜の光源研究』で有名な
内容は珍しいものではなかったが、着眼点や幅広い視野からの解説が面白かった。
吹上教授と私の就職先とは関係がない。
有名な教授の名前を使って、《間違った教育》などと書くのはお門違いだ。
《満月のロマンが犯罪の温床に?》
――犯罪者の起こした犯罪が、月や月光の研究者に繋がるはずはない。
《〇〇大臣、犯罪時間に豪遊?》
――満月の夜に増えるのは、犯罪だけじゃないって証明すればいいのに。
目立つ見出しに反論を添えながら、私は連日騒ぎ続ける報道の載ったゴシップ誌を数冊、コンビニで購入した。
ついでにチョコとグミ……レジ横のピザまん。
かつて時の存在となった研究所に、私は所属している。
現在は悪者として祭り上げられている場所だ。
もてはやされた当時よりも世間の注目を浴びる研究所や幹部連中は、マスコミに追い回さわれる状態だ。
だからこそ世論への反論を練るため、情報源が必要なのだろう。
新聞は研究所に届くが、定期購読など考えたくもないゴシップ誌も一時的な参考にするため、私がお使いに出されている。
私は注目を浴びていないものの、研究所にこもりきりだ。
たまに使いへ出るのも息抜きにはなる。
私は現在、地上へ到達する月光を遮断もしくは改質する研究を進めている。
私がこの特異急務を課せられている理由を述べる前に、これまでの経緯を説明する必要があるだろう。
満月の夜は猟奇殺人が増える。
人間への月の影響力に、私はロマンを感じたのだ。
いつか専門的に研究してみたいと思っていた。
それだけだった、はずなのに……。
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